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好きと結婚

「な、何を言っているんだエミル!冗談も加減が過ぎると私も怒るよ」


 目の前でユリアが責められているのを見て、私は自然と言葉に力が入った。


「冗談じゃないもん!私はお姉ちゃんのことがこーーーーっんなにも好きなのに、お姉ちゃんに好きの一言もまともに言えないユリア王女が婚約できるなんてずるいずるいずるーーーい!」


 エミルがこんなに駄々をこねるのはいつ以来だろう。まるで幼少の頃のエミルに戻ったみたいだ。



「わ、私だってっ、ケイに……言える、もん……」



 ユリアの声は段々と小さくなっていった。


「では、今ここで、私の目の前でお姉ちゃんに好きと言ってみてください!本当に婚約者であればこれくらいのことできて当然ですよね?」



 エミルは胸を張り手を腰に当てて自信たっぷりに構えている。

 対してユリアは羞恥心で顔を赤らめ、肩がぷるぷると震えている。言うか否かを葛藤しているんだ。

 

 正直言うと、日頃恥ずかしさが先行して、なかなか好きと私に言ってくれないユリアだから聞いてみたい気持ちが大きい。でも強制じゃなくて、ちゃんと本人の意思で私は聞きたい。

 そうなるとやはりここは止めるべきか……。




「私はっ……ケイのことが……すき……。これからもずっと、私の側に……いてほしぃ……」



 

 たった一言、それだけで私の胸は焼かれるように熱くなった。

 苦しい……。

 私が望んでいた一言はここまでの破壊力があっただろうか……。


 ユリアの顔はさらに真っ赤になり、私と目が合うなり両手で顔を隠し、後ろを向いた。


 顔を隠してもなお耳まで赤く染まり、見えなくてもどういう表情をしているのかがはっきりとわかった。でもその表情は想像ではなく、しっかりとこの目で確かめたい。


 手をどかそうとして嫌がられて……でも恥ずかしがりながら私の目から必死に逃げようとする最高にかわいいユリアを見たい……。


 抱き着きたい……強くこの腕の中にユリアを感じたい……。

 でも今の私ではユリアを求めすぎるあまり力が入りすぎて、ユリアに痛い思いをさせてしまうかもしれない……。


 ああ、だめだ。気持ちが抑えられない。やっぱり私はユリアが世界で一番好きだ。愛してる。今すぐにでもけっこ……ん…………。



 瞬間、あの時のカーミラさんの言葉が再び脳裏によぎった。

 そして、もう一つ大事なことを忘れていたことに気づいた。



 私は、まだユリアにプロポーズをしていなかった……。



 今の私たちの婚約関係は、ただ結婚できる年齢に達していないとか、ユリアと結婚するに相応しい人間なのかを調べるまでの一時的な関係だけじゃない。

 結婚する大前提となる欠かせないことがあったんだ。


 そしてそれが、プロポーズをして、ユリアに最良の返事をもらうことだったんだ……。


 公的な結婚条件にプロポーズの有無はない。それでも、しなければならないような義務感を感じた。

 


 ユリアに、プロポーズをしよう……!




「お姉ちゃんっっ!!!!」


「っ……!!」


 気づくとエミルが目の前で頬を大きく膨らませていた。


「お姉ちゃん、今度の週末に私とデートして!それで私がどれだけお姉ちゃんが好きなのか証明して、お姉ちゃんが私と結婚したくなるくらいに惚れさせてやるからっっ!!」


 エミルは大きな声でそう言うと、ふんっときびすを返し、中等部に戻っていった。

 

 今までエミルは姉妹間の愛情表現として、大袈裟に愛してるとか結婚するとか言っているのかと思っていた。


 でも、本当に私にそういう気持ちを持っているのだとしたら、ちゃんと応えてあげる必要があるな……。



「ケイ……?」


 ユリアが子猫が鳴くような小さな声で名前を呼び、制服の端を指で引っ張った。


「エミルがごめんね。また会った時にちゃんと言っておくから」

「ううん、謝るのは私の方よ。エミルちゃんの言っていたことは間違ってなかったわ。ケイがこんなにも私を想ってくれているのに、私はそれに応えてあげられていないもの……」


 思い悩んだ表情で話すユリア……。


 確かに私はユリアに望むことは多くある。それでも大事なのは、君の一番近くにいることができて、君の笑顔を見られることなんだよ、ユリア……。


 だから、君が私のために答えてくれようとしているのは本当に嬉しい。だけど私のことで君が思い悩む姿を見たくない。

 

 私とユリアの愛の天秤が、私の愛と言う名の重りで偏ってしまっただけなんだから……。



「ユリア、冬休みに入ったら、私とデートしよ?」

「うん……」


 

 ここで私は、ユリアに…………

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