繋がり
翌日。私とケイは自国の城に戻る必要があるため、クロエさんたちと別れることとなった。リルとクロエさんは事後処理などのために残り、数日後には学園に戻れるそうだ。
城から出る際にはリルたちと一緒に、両陛下までもが門前に見送りに顔を出してくれた。私たちの馬車が出た後も見えなくなるまで手を振り続けてくれた。
そんな優しい人たちと別れると思うと急に寂しくなった。途中から私の視界はぼやけ、最後までリルたちの姿をはっきり捉えることができなかった。
カーミラさんとナディアさんは故郷が私たちの国と同じ進行方向にあるため、一緒に同乗させた。
二人は到着するまで、今までにあったことを教えてくれた。
カーミラさんは今まで何人もの相手と政略結婚をさせられそうになり、断り続けたこと。ナディアさんは料理や掃除の仕方などを毎日勉強したことなど……。
二人のそれに共通したのは、カーミラさんとナディアさん、互いが互いのことをまた会えると信じ、意思を貫き通したこと。
それが良くも悪くも、今回の再会に繋がった。
私はこの二人の再会を運命という言葉で片付けたくはなかった。
遠くに離れ離れになり時が経っても、こんなにも互いのことを想い続けてきた。そして互いのために努力してきた。
それなら再会するのは時間の問題で、もはや必然だ。
向かいのシートで互いの肩をくっつけ眠っている二人。
何とも幸せそうな寝顔をしている……。
二人の寝顔を見ていると、私の意識はふわふわと浮いてしまいそうな心地がしてきた。
「ケイ……」
「っ……。ふふ、疲れちゃったよね」
私は二人が寝ているのをもう一度確認し、ケイの膝に頭を乗せた。
~ロベスト帝国 王城~
「ふぅ……」
クロエは机上に積まれた資料に目を通し、背もたれに背中を預けた。すると扉からコンコンと軽快な音が。
クロエは誰が叩いたのかはおおよそ検討がついていた。しかし万が一もあるため、いつものようにどうぞ、と入室の許可を出した。
「姉ちゃん……。えへへっ」
リルは小さく扉を開けると、きちゃった、と微笑しながら顔を覗かせた。
クロエもつられて小さく笑みをこぼし、仕方のなさそうに椅子を立つ。
「リル。あなたにも沢山辛い思いをさせてしまったわね。守ると大きな口を叩いていたのに…」
「姉ちゃん…」
リルは一息飲むと、クロエにゆっくりと近づいた。
「姉ちゃんは私を守ってくれたよ。私聞いたもん。姉ちゃんが結婚話を受けたのも、私に来ていた申し出の肩代わりをしたんだって…」
クロエは何も答えずリルから顔を背け、窓から外を眺めた。
「姉ちゃん。私ね、好きな人がいるんだ。誰だかわかる?」
夕陽のせいか、リルの顔は薄い赤色に染まっていた。クロエの後ろ姿を見つめ、後ろで両手の指先を絡ませる。
「お姉ちゃん。私はお姉ちゃんがこの世界で一番大好きです。……私と、結婚してください…」




