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王様からの呼び出し

 クロエさんに案内された食堂には既に豪華な食事が用意されていた。私はメイドに引かれた椅子に座る前に何となく食堂を見回してみた。

 クロエさんとリル、それに私たちがいるのにメイドや調理師の人達の姿がまばらだ。と、クロエさんがこっちを見ている。私が不思議そうにしているのに気づいたようだ。


「今はお父様たちの方へ人員を割いているのよ。何も心配することないわ。ここには私たちの城の兵よりも頼りになる騎士様がいらっしゃるもの」


 そう言ってクロエさんは微笑しながらケイの方を見た。


「私はただユリアの口約束を果たしただけですから」

 

 ケイは私を見ながらにこりと笑顔を作った。


「このまま話していたら料理も冷めてしまうわね。まずはいただきましょうか」


 私たちは目の前の料理たちに手を伸ばした。騒動のあとで落ち着いた状態のせいか、料理がとてもおいしく感じる。

 式場で食べた料理はどれも味があるのは理解していても、味わって食べることができなかった。私以上にリルは式場で出た料理は見るだけで口に運ぼうともせず、結局食べなかった。

 それが今になって食欲を取り戻したようで、カチャカチャと食器の音をたてながら豪快に平らげていく。


 食べ始めて数分後、リルの周りには何枚もの皿が積み上がり、メイドが食器を下げ、おかわりを運んだりと慌ただしく動く。

 ふとクロエさんと目が合った。呆れ顔で首を横に振るクロエさん。どうやらここではいつもの光景らしい。学園でもよく食べると感心していたけど、まだまだ本当のリルを知らなかったようだ。


「……そう。わかったわ。すぐに戻って来るから、みんなは食事を続けてちょうだい」


 食堂に入ってきた一人のメイドに耳打ちされたあと、席を立ちメイドと一緒に食堂を出ていってしまった。

 食事を続けるように言われたけど、あんな騒動があり、クロエさんだけ呼び出されるなんて心配だ。ケイも首を振って行かないように言っているし、このままでいいのだろうか。

 リルは……食事に夢中だ。たぶんクロエさんが出ていったことも気づいてないだろう。

 というか、どれだけ食べるのだろうか……?



 しばらくしてクロエさんが戻ってきた。すぐに戻ると言っていた割には少し遅かった。何かあったのかもしれない。


「みんな、食事中で悪いのだけれど、一度中断してもらえるかしら」

「何かあったんですか?」

「お父様たちにあなたたちを連れてくるように言われたのよ」

 

 


 ~国王専用室~


「先に皆さんには多大な迷惑をかけてしまったことを詫びさせてほしい。誠に申し訳ありませんでした」

 

 国王、クロエさんたちのお父様が深々と頭を下げ、続いてお后様、周りにいた騎士兵やメイドたちまでもが私たちに頭を下げた。

 国王が頭を下げるなんてことはとんでもないことだ。いくら今回の事に対する謝罪でもお父様が相手ならいざ知らず、王女の私やカーミラさんたちにする行為としてはあまりにも大きな問題だ。

 もしこれが各国に知られでもしたら、それこそこの国の威厳に関わる。

 早く頭を上げさせないと……!


「今すぐ顔を御上げください国王様。私たちはこうして王様の目の前に無傷で立っております。償いであればお言葉だけでも十二分です」

「いえ、こうでもしなければ私の気が済まないのです。私が身の回りに気を配り、状況を把握していれば今回のようなことを未然に防ぐことができたはず。なので私個人としても謝罪させてください」


 リルに優しい方とは聞いていたけど、ここまで人として人間味溢れた王様だとは想像していなかった。お后様も見るからに人がよさそうな御人だ。だからこそ余計に当人たちは何もしていないのに謝罪させるのが心苦しい。

 

「お父様。そろそろ本題に」

「ああ、そうだな」


 クロエさんの一声で王様は椅子に座り直した。


「カーミラさん。ナディアさん。よろしければこの城に住む場所を変える気はありませんか――――」


 

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