再会
「はぁっはぁっ……。クロエ王女、相手の数が多すぎます。このままでは……」
「はぁ……ふふっ、学院首席のカーミラ・ハーツが腰抜けたことを言うじゃない。私は例え一人になったとしても、守るべきものがある限りこの剣を振るい続けるわ」
背中を合わせた二人の周りには、地面に倒れた騎士と剣を構える騎士とが混在していた。倒した騎士の数は双方ともに途中から数えることをやめた。
感覚で百人以上は倒したことだけはわかっていた。しかし、倒しても倒しても奥から流入してくる相手に、クロエとカーミラの限界も近づいていた。
「それはリル王女のことでしょうか……?」
「そうね。あの子だけは私にとって唯一、本当の意味での私の理解者よ。だから、あの子だけはどんなに犠牲を払ってでも死守してみせるわ」
普段ならリルに対する想いなど全く話さないクロエ。だがこの時のクロエは戦う意味を強く抱き戦っていたことで本音がそのまま言葉になってしまっていた。
クロエ本人は自分が珍しいことを言っていることに気づかず、そのことを感じたカーミラはクロエの本当の愛に初めて触れたような気がした。
するとカーミラは真面目な顔をして告白まがいの発言をするクロエがおかしくなり、喉奥で微笑した。
「クロエ王女。私は、今初めて一人の女性としてあなたの事が好きになりました」
「……申し訳ないけれど、それは独り言だったことにさせてもらうわ」
「ええ、そちらの方が助かります。なにせこの片思いは、今後絶対に報われませんからっ!」
二人は再び群衆に向かって駆け出した。
「そこまでだっっっ!!!」
入口側から一つの声が聞こえ二人は足を止めた。
声がした方向の騎士たちが道を開けていく。二人は警戒しつつ睨んだ。
「ナ……ナディ……?」
カーミラは目を見開き名前を呼んだ。
「覚えててくれたんだ。嬉しい……っ。でも、こんな形で会いたくなかったわ、カーミラ……」
ナディと呼ばれた少女は縄で拘束され、後ろに剣を突き付けられていた。
「カーミラよ、これ以上我がハーツの名を穢すな。これ以上は私も望まない、お前もそうだろう。さあ、剣を捨てろ。そして王女と婚姻を結ぶのだ!」
「だめよカーミラさん!これは罠よ!」
カーミラは剣をその場に落とした。
カーミラは泣いていた。
歯を見せ、目は獣のように鋭く、拳は握られたまま小さく震えていた。
「っ―――!?」
クロエが気が付いた時には騎士がすぐそこまで迫っていた。
最悪の場合の覚悟が一瞬だけクロエの脳裏に浮かんだ次の瞬間、横側にいた騎士たちが吹き飛ばされた。
「な、なにぃ!?」
「あ、あなた……!」
クロエの目には髪を後ろに一束にまとめた少女が映った。
「お待たせしました。クロエさん」




