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婚約破棄

 あの子がどうして壇上に上がったのかはわからない。理由を探ろうにも今はここを離れることはできない。予定が大幅に狂った……!



「それではこれより、誓いの儀に入ります。クロエ・デ・ノーブレット第一王女、カーミラ・ハーツ様、前へ……」



 聞いていた段取りよりも早くに誓いの儀が来てしまった。ここまでにまだ二つあったはずの段取りが省かれてしまうなんて誰が予想できようか。


 流石に会場の人間も驚きでしばらくざわついたが、今は切り替えて粛々とその時が来るのをを見守っている。


 リルもこれ以上は見たくないと会場外の廊下に出て行ってしまった。二人が結婚したいと言っていたからその意思を尊重すべきか否かの判断を長引かせてしまったせいで後戻りできない状況に陥ろうとしている。

 


「ケイ、このままじゃ……っ!」

「くっ、最悪私が……」


 ケイは壇上を睨み、椅子に立てていた剣を手に取ろうとした。


「何……!?」


 後ろにいた特派員が声を出しその場に立った。呆気にとられた表情の先を見ると、私たちが話している間に何かが起こったようだ。

 会場は先ほどよりもどよめき、両陛下も戸惑いを見せていた。 




        ☆☆☆




「このまま終わってもつまらないでしょう? だから来賓にもっと楽しんでもらうために私たちの得意分野を生かそうと思ったのよ」

「何をお考えになられているですかクロエ王女。今は今日までの全てを締めくくる最たる儀でございます! 御冗談を仰られる時では―――」



 司会をしていたバートルはクロエに慌てて駆け寄った。



「この私の結婚式よ。せっかくなのだから、前例にないものを残してより記憶に残る結婚式にしたいじゃない。それに交流戦の時は手合わせできなかったのだし、来賓にもいい一興の土産になるわ。カーミラもそう思わないかしら?」



 カーミラは胸に手を当て頭を下げた。

 


「ですがこの結婚式は旧来よりノーブレット王家に伝わる誇りと伝統のある式ですぞ。それを王女様お一人の一存で変えようなど!」

「あら、その誇りと伝統ある式の過程を無下にも省いてしまうのは問題ないということかしら? 随分と都合のいいようにできた式なのね」



 バートルはクロエを睨みつけながらぎりぎりと音を立て歯を食いしばる。


 程なくしてメイドたちによりクロエとカーミラそれぞれの剣が用意され、会場の中央が大きく開かれた。

 来賓者らは戸惑いつつも王族の結婚式を一旦忘れ、二人が戦うのを楽しみ熱気が湧き始める。



「クロエ様、何か賭け事などいかがでしょうか?」


「ふふ、それはいいわね。なら、あなたが負けたら今回の婚約はなかったことに、なんてどうかしら?」



 クロエは周りの反応を気にすることなく、にこりと笑顔を作った。

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