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親友の秘密

 交流戦も無事にとはいかなかったものの、私たちが勝利したお祝いのパーティーが開かれた。


 一般の観客を除いても、会場にはブレンノヴァイス学院の生徒たちを含めた関係者が所せましと会食や立ち話に興じている。

 


「あーん!私もお姉ちゃんの試合見たかった~!!」

「私も、ユリアお姉様のかっこいいお姿を一目入れたかったです……」



 エミルちゃんはケイの腕にしがみつきながら頬を膨らませ、アリスちゃんはしょぼんと落ち込んだ。


 学園の大規模な行事でも中等部では通常授業が行われ、観戦することができなかったのだ。

 でも、私にとってそれは好都合。


 お姉様と呼んで慕ってくれているアリスちゃんの前で、逃げながら負けるという醜態を晒すことを回避できたのだから。

 



「ケ~イちゃんっ。お疲れ様!」



 ケイの肩をポンっと叩き、ナーシィさんは笑顔を見せた。



「ユリア様も今日はありがとうございました。私に勝てる実力をお持ちながら、今回で剣を手放してしまうのはとても惜しいですね」

「ありがとう、ナーシィさん。でもこれはケイと約束したことなので」



 これを聞いたナーシィさんはふ~ん、と口をにやにやさせながらケイの顔を覗き込んだ。



「さすが、うちのトップとの試合中に愛の告白をした騎士様だけのことはあるね~」



 エミルちゃんはこれに即座に反応した。

 ケイの服の袖を指で引っ張り、新月よりも深い闇のように真っ黒な瞳でケイをじっと見つめる。


 エミルちゃんを見たケイは慌てて言い訳を始めた。



 一方で私はクロエさんに聞いたケイの言葉を思い出させられた。

 直接聞いたわけでもないのに心臓をキュっと握られたような感覚に襲われ、ケイから顔を背けた。


 お酒を飲んだわけでもないのに顔が熱くなり、いっそお酒だったらいいのに後悔した。


 公で聞くにはこの上ない羞恥だと思うけど、その言葉、直接聞いてみたかったな……。

 



「そういえば私と戦ったあの小さい子いるかな?最後があれだったから、少し話でもって思ったんだけど……」

「えーと……」



 お願いだからこれ以上イヴちゃんを傷つけるようなことはやめてあげて!

 イヴちゃんはようやく寝付いたところなんだから……。



 先程まで学園の生徒たちから散々かわいいもの扱いされたイヴちゃんは、疲れたのか会場の端でカトレアさんの膝枕で気持ちよさそうに寝ている。


 きっと美味しいものを沢山もらったんだろう。



 まあいっか、とあっさり話題を切り替えたナーシィさんはエミルちゃんやアリスちゃんとも積極的に会話を交わしていく。


 リルもそうだけど、こういうフレンドリーな人はほんとに尊敬する。

 私にはできない芸当だ。



「お、お姉様……!」



 アリスちゃんの声で考え事から意識を戻された。

 おぼつかない様子で指さす方向に目を向けると、いつそうなってしまったのか、ナーシィさんがケイの腕に頬をこすりつけていた。


 口を歪ませそれはもう嬉しそうな表情をして……。



 私が意識を浮かせていた僅かな時間に、一体何がどういう流れでこうなったのか。


 その理由を探ろうとエミルちゃんやアリスちゃんに目を向けても、エミルちゃんはまた闇のオーラを身にまとっているし、アリスちゃんは動揺して話せそうにもない。


 ナーシィさんは私たちの関係は忘れていないだろうし、さっきのエミルちゃんの反応を見てもまだケイに手を出そうとするなんて。



 わからない、ナーシィさんが何を考えているのかわからない……!




「ケイちゃん。ケイちゃんにとっての私は今でも親友……?」


「もちろん。ナーシィは私に足りないところを支えてくれた、信頼できる一番の親友だよ」


「そっか……」



 その時、ナーシィさんの表情はほんの一瞬だけ、どことなく悲しそうに見えた気がした。

 


「さーてと。外も暗くなってきたし、そろそろ引き上げるとしようかなー」



 私は声を掛けようとしたけど、すっと背中を向けられそれ以上先に進めなかった。



「……ケイちゃん。これからも、私たちは一番の親友だよ……っ」


「うん。ナーシィが私の親友で本当によかったよ」




 またね、と軽く別れの挨拶を言うとそのまま出口の方へと歩いて行った。





 が、しばらく歩いたところで何か忘れ物でもしたのか、立ち止まり、こちらに速い足取りで戻ってきた。



 いや、違う……これはケイに向かって――――っ!




「っ………………じゃあね、ケイちゃん……」


「ナーシィ……?」



 ケイは右頬を押さえながら、去っていくナーシィさんの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。



「大好きだったよ、ケイちゃん……。さようなら……っ」

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