コミュ力モンスター
暑いだるい溶ける。夏休みが始まって早2週間。私はというと朝11時半に起き、アニメを1本見て、なんか家にある物を昼ごはんとして食べ、ゲームをして、アニメを見て、ラノベを読んで宿題を見て、夜ご飯を食べて3時までネトゲ。就寝。
という生活を2週間。いや、別にぼっちじゃないですからね!友達くらいいますからね!?……いや、画面の中じゃないですって!2人もいるんですから!
まあ、連絡取って無いんですけど。だって、通信履歴百超えてますもん。我ながらなんで友達がコミュ力モンスターなのか知らんけど。
2人とも複数友だち居るし、私は所詮大勢居る中の1人に過ぎないので、そこんとこしっかり弁えてるんで。言ってて悲しいなぁ。
「はぁ…」
「なにため息ついてるの?」
「ん?我ながら酷い夏休みだなあああああああああぁぁぁっ!」
「うわ、びっくり」
「こっちが、びっくり!」
いつの間にか背後に居た私の友達1号こと、琴音。え、ドア開ける音も、足音も何もしなかったよ?ホラーかよ。
琴音は、一言で言えばカワイイ系の女の子。ボブって、言うの?ゆるふわした髪型はほんのり甘栗色で、ジーンズのパンツと白シャツと言う、シンプルなコーデな癖に自分の可愛さを十二分に引き出している。
「て、ていうかなんで?えっ、なんで居るんです?鍵閉まって…るよ?」
「うん。合鍵だよ」
ほらって、鍵を見せてくる。チャリとさも自分の家の延長みたいな感じで、琴音の家の鍵と同列にホルダーに私の家の鍵がならんでる。
私の家族は何をやっているんだ!なんで合鍵を普通に渡してるの?
「ああー心配しないで、ちゃんと玄関の鍵閉めたから」
「ああああああああぁぁぁ!!!そこじゃないぃぃぃい!」
唖然としている事を心配そうに私の心配してない心配し始めたよ!
意思疎通のできないこんな感じ、嫌!絶対わざとだろ!
しかも私が頭を抱えているのを横目に電話し始めたよこの人!
「あ、居たよ。自分の部屋に自分から監禁されてた。これは……ねっ☆」
何が「ねっ」じゃ!何するつもりなん?平穏の平の字が崩れ始めてる気配。
こう、大したルーティーンじゃ無いけど、それが乱されるのは精神衛生上あまり宜しくない。
期待半分、ストレス半分の心境だ。
ガチャリ、バタン!ガチャ。
「……え、今鍵開いた?」
「誠じゃない?」
「誠じゃない?とは?」
こんな早い時間に親が帰ってくるわけもないし、かと言って鍵を開けれる人なんて居ないんだけど。
普通なら物凄く怖い事なのに、目の前に何故かうちの鍵を持ってる人が居るからだろうか、予想は着くけど信じ難い。
「よっ」
ドアを開けて、寄りかかって手を目の横でなんかシャッてやってキザったらしいけど、様になっちゃってる人が居る。
「なんで?」
「うん。合鍵だよ」
「なんでさ!なんでうちの合鍵がそうポンポン人の手に渡っているんだあ!」
「「紗奈ママがくれたよ?」」
絶句である。幾ら友達でも渡しますか?MyMother.
コトリ、と、麦茶をテーブルに置く。誠が。そう、誠が。
なーぜか誠が自分の家に客人を招き入れたかのような振る舞いをする。ここ、私の家なんだけどなあ。
誠。身長が高く、切れ長な癖に大きな瞳をもち、凛々しさの中になーぜか、可愛らしさをどことなく感じる顔立ちのショートカットの王子様……女の子です。カッターシャツにジーパンな癖にモデルも逃げ出すレベルの着こなしなのはこれ一体どういう事か。
「で、あの〜なに用でしょう?」
「「夏休みをドブに捨ててる子を引っ張り出して遊ぼうかと」」
「息を揃えてそんな怖いこと言わないでね。そもそも彼氏とかと遊んどけよー」
可愛いの化身と、クール系の頂点みたいな人達が恋人居ないわけないじゃん。所謂陽キャだよ。
夏なんてありとあらゆるこじつけ付けてイケナイことしそうな感じするよ?……私めっちゃ失礼だな。
琴音はムッとして私に怒鳴る。
正直、人が眉間に力を入れた表情は個人的に怖い。
ヒッと、紗奈は体を隠すように腕を前で組んだ。
ほとんど無意識での行動。
琴音はその仕草、表情をみて、慌てる。
「私の彼は紗奈ただ1人だよ!」
「えっ?違うよ?」
「そうだ、違うぞ」
「ま、誠…やっぱりなんやかんや変だし異常だけど…」
「私の嫁だ」
「異常だった!」
あぁ!すました顔して訳わかんこと言ってらぁ。
誠は私のツッコミに意に介さず私のシャツを指さす。
「何そのダサいシャツ」
そこ言葉に少なくないショック!だ、ダサいだと。てか、嫁発言の否定をスルーしたなコイツ。
「こ、これは私のオーダーメイドで私のセンスの集大成なのに」
琴音が哀れみを込めた目で見てくる。
「センスが死んでたね」
「辛辣っ!えっ、なになに、何がダメなの?」
「何って、まず文字ってのダメだよね、しかも日本語。何その「夏えぬじー」って」
「しかもカラーリングが無駄にカッコイイのが余計、ね。黒字に金の文字って……服、買いに行こっかまず」
「それから、だね」
何やら意見がまとまりました、みたいな雰囲気出してるけど、行かないよ?陰キャ舐めるなよ!店員さんすらビビるんだから、なにあの笑顔偽物の笑顔を向けないでよ。
ここは何としても回避しなければ。
「まって、理由とか言い訳のターンをスキップして、何の話か知らないけど話を進めないで!そもそも私は今お金ないし、服を買ってどっか行く予定もないからね、ね、無駄でしょ?ショッピングなら2人で行っておいで」
完璧。予算がないこと、予定がないこと、二人で遊ぶ事の推奨。仲良い2人だから家でたまたま?合流したことにすればいい。いや、家に連絡入れることなく勝手に入って勝手にお茶出して涼んでるのって可笑しいよなあ。
「課金しまくってるからお金ないんでしょ?」
「グッ!」
事も無げに私の行動を読んでやがる。やるな、流石誠。本当にその通りだから何も言い返せないけども。
「ま、まあ、そういう事だから」
いや、これでお金ないと言う発言に現実味が帯びた!行ける!
目をぱちくりした後に鞄をガサゴソと漁り1冊の本を取り出して私に向けてくる。
「いやいやー、知ってるよ?コトト先生?」
「ヒッ!な、なんのこ、ここここ、とかな?」
クールな人の笑顔って破壊力やばいなあ、じゃなくて!
琴音が部屋の鍵を閉めてくるりと振り向いたその時の表情と言ったら悪魔かっ!と、突っ込みたいほどだったが、少々心に余裕がないですぞ。
「そうだったー、はい、サインちょうだいー」
うがああああああああぁぁぁ!!!爆弾投下をしやがった!でも待て、まだ憶測の範囲内!行ける!
「「いやー、紗奈ママに聞いた時はびっくりしたよー」」
我が母君何してんの!
「て事で、お金ない発言は嘘という事は知ってるんだよ」
少し悲しそうに琴音はムッとして言う。多分嘘つかれたことが悲しいかったのかも、ちょっと悪いことしたかな…でも、笑われたりしたら嫌だったし、そんな事する人じゃないのは知ってるけどやっぱり怖い。
もっと言うと、関係ないだろ。私の黒い部分はそう突き放す。私の臆病の部分は2人を失いたくなくて、必死になるけど、私の勇気は何も出来ない。
私が何も言えずに俯きしばらく経つ。……様子を窺うように顔を上げると荷物をまとめて、立ち上がる2人。
そうだよね、ちょっと重い空気だし、帰る、よね。
「さて、行くか」
「うん。行こっか」
2人は部屋をでる。部屋に入ってくる。
「「何やってんの、行くよ!」」
「ふぇ?帰るんじゃないの?」
「えっなんで?なんでそんな事言うの?私は紗奈に殺されるくらいまでは離れないよ?」
こ、怖っ、琴音まさかのヤンデレ!?目が死んでる!私はビクつきながらも、今の今まで思ってたことを素直に話す。
「「はぁあぁあああああああぁああああああああああああああああああぁぁぁ………」」
「もういい、無視だ。琴音、そっち持って」
「リョーかいっ!」
あれっ?なんで両脇抱えられてるの?UMAごっこ?あはは、面白いね。……1階に向かってるね。辞めて!死んじゃう!死んじゃうからあああぁぁぁぁああ!!!




