83話 ビリーさんのブートキャンプ
檜山先輩と話した翌日の放課後、小桜家でストレッチをする事になりました。
自分でも脈絡がないと思うが、事実である。元々平日放課後も運動をする約束で、今日は生憎の雨なので、じゃあランニングの変わりにストレッチって事になったのだ。なので小桜父に買ってもらった運動着に着替えてリビングに戻ると、そこにはジャージ姿の美羽ちゃんと、小桜さんがいたのだが……
「小桜さん、その格好って」
コクコク(首を縦に振る)
照れ臭そうに出てきた小桜さんの姿は青いスポブラにショートパンツ一体型のレギンスパンツ、その上にジャージという、スポーツショップで俺が見入ってたマネキンと全く同じ格好をしている。ジャージのジッパーも深く下げられ、スポブラの下部分から垣間見えるお腹も、バッチリと見えまくりだ。
エロくないけど、超エロいです。
「その、凄く似合ってます」
……………(視線を下げる)
「あとその、嬉しいです。ありがとうございます」
……………(更に視線を下げる)
無反応は駄目なので咄嗟に褒めたけど、どうしよう。まさかのサプライズに唖然として、普段の大人しい格好と異なる小桜さんの姿をずっと見ていたいけど、露骨過ぎるのは駄目で、だけど男としての本能が……、
「……お兄ちゃん」
「おおっ、ごめん! 美羽ちゃんも似合ってる似合ってる」
「うう、全然嬉しくないです」
その後、安いのにし過ぎたという美羽ちゃんの呟きをスルーして、美羽ちゃん母が昔使っていたエクササイズDVDを再生。3人がテレビの前に並ぶのと同時に、やたらとハイテンションな外国人が登場する。
とにかくストレッチに集中して、邪念を取っ払わないと。そんな動機で、体力が全然ないのに俺と小桜さんはテレビの外国人と一緒に、全力でストレッチに励みました。
…
……
………
「……………ぜぇ、………ぜぇ、………おえっぷ」
よく分からんキャンプに入隊させられ、陽気にハイスピードに体を動かしまくって駄洒落を言いまくる外国人に全く付いていけず、それでも気合で頑張り続けた結果が、この死屍累々な惨状である。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、流石は美羽ちゃんだ。若さって凄いね」
「えー、お兄ちゃん達はもう若くないの?」
3人とも汗だくだが、美羽ちゃんは立っている。やっぱり若さは偉大だ。因みに俺と小桜さんはグッタリで、望んでいた小桜さんの汗だくシーンだけど、色気は皆無である。
そうして息を整えている間、美羽ちゃんが体重計に乗った後、壁に飾られた用紙に記入を始める。
「ん? 何それ?」
「美羽の体重グラフです。こういうのを作った方がやる気が出ると思ったので」
「へぇ、順調に体重落ちてるね」
それは美羽ちゃんの体重・体脂肪が記された折れ線グラフで、緩やかな下降線になっている。
「お兄ちゃんも作りますか? お姉ちゃんの横が空いてますよ?」
「うん、じゃあ折角だから……って、あっ」
美羽ちゃんプリントの横に、小桜さんの体重&体脂肪が鮮明に記されたプリントがあり、因みに小桜さんの経過は横ばい……
ベリッ!(紙を剥ぎ取る)
「あっ、その、小桜さん。今のは偶然に目に入っただけで……」
弁解が終わる間もなく、小桜さんが逃げちゃいました。
この展開、俺と小桜さんが病室で出会った頃と同じで、懐かしいなぁ。
ビリーズブートキャンプ:2005年くらいに流行ったエクササイズビデオ。




