78話 どうしよう
買い物を終えた後にランチに誘われて近所の定食屋に来店となったが、他人との食事は学べる事が多く、考察すべき点も多い。
食事は人付き合いを円滑にするのと同時に、マナー・礼儀作法の実戦場所であり、互いに評価される場所でもあるのだ。
小桜お父さんは社会人だけあってマナーは完璧で、オーダーはホッケ定食。今までも魚を食べる場面が多かったから、魚が好物らしい。そして美羽ちゃんのマナーも合格点だけど若干緊張している節がある辺りが可愛く、オーダーはおかずが多い彩定食。美羽ちゃんは好物より種類、知らない食べ物は積極的に食べてみる姿勢も面白い。因みに俺は生姜焼き定食、今までなら肉野菜定食だったけど、病み上がりとしては体力を付けねばという気持ちである。
ただ小桜さんは、日替わり定食でした。
小桜さんの食事は黙々と食べるだけで、外食も定番物しか頼まない姿勢を貫いていて、何が好物かも全然分からない次第だ。
「小桜さん、それ美味しいですか?」
コクコク(首を縦に振る)
ううーん、まぁ本人が納得ならいいか。
「お姉ちゃんは何でも黙々と食べるから張り合いがないです。美羽の料理・お弁当を残さず食べてくれるのは嬉しいですけど」
「へぇ、お弁当も美羽ちゃんが作ってるの?」
「はい、お母さんと一緒に。お父さんのお弁当も作ってます」
この言葉にお父さんもニンマリで、微笑ましい限りだ。
「あっ、お兄ちゃんのお弁当も作っていいですか?」
「別にいいけど、流石に悪いような」
「大丈夫です。1人分増えた所で大した負担じゃないです。むしろ美羽自身のお弁当を作りたいくらいです」
「ああ……、あの小学校の給食、残念だよね」
俺が卒業した小学校に美羽ちゃんが通っていて、当時から変わってないのなら、納得の主張である。この提案に小桜お父さんもOKサインをくれたので、とりあえずお試しで作ってもらう事になりました。小学生とは言え、女の子の手作り弁当か、嬉し……。
じーーー(こっちを見ている)
ううっ、小桜さんの視線が痛い。
「お姉ちゃんも一緒に料理します?」
と、美羽ちゃんが助け舟を出してくれたのだが、
フルフル(首を横に振る)
えー、作ってくれないの?
「うー、お兄ちゃんのお弁当作りなら乗ってくれると思ったのに」
「あれ? 小桜さんって料理しないの?」
「はい、何度誘っても料理だけは一度もやってくれないのです」
もしかして、小桜さんって飯マズ属性? そんな疑惑視線を送ると、小桜さんが目を逸らしちゃいました。小桜さんにも姉としての威厳等の葛藤があるのかもしれない。
「まぁ今すぐじゃないにしても、いずれ小桜さんの料理も食べてみたいです」
「美羽もです」
この提案に小桜さんが物凄く困った反応をしてきたので、これ以上無理を言うのは止めておこう。要望を言うのはアリだとしても急かすのは良くないからね。




