75話 爆睡
もう週末の金曜日で、美羽ちゃん達が来たのが月曜だから、結構な時間が過ぎてしまった。母さんも流石に今日は美羽ちゃんを帰すと言っていたし、この話のオチって、どうなるのかな? そう思いつつ、高校から我が家に帰還してリビングに入ると、
「うおっ!! どちら様!?」
見知らぬ女性が布団で寝ている。
謎過ぎる状況に混乱していたら、すぐ横にいた萌香ちゃんが、
「うふふ、私の母です」
「あ、ああ。そうなんだ。はじめまして?」
条件反射で頭を下げたけど、相手はぐっすり寝ているから無意味だった。それにしても、どうして睡眠? そう勘繰っていたら、台所から母さん・美羽ちゃんが出てきて、説明が始まる。
「今日の朝8時過ぎ? 皆学校に行った後に、入れ違いで来たの。やっと仕事から解放されたけど、今週はすーっと会社で徹夜続きだったみたいで、目に物凄いクマがあったから、娘さんか帰ってくるまで仮眠を薦めて、今に至ってます」
「えっ? 今って16時過ぎだよね? ずっと?」
「うん、ずっと」
流石の母さんも失笑している。
つまり萌香ちゃん母は、8時間爆睡中で、今現在もとてもイイ寝顔で、起きる気配が全くない。
「うふふ、母がご迷惑をかけてすみません」
そして小4の娘が平謝りで、反応に困るな。とりあえず萌香ちゃん母はお疲れなので、起きるまで気長に待つ事にしたんだけど、目覚めたのは23時という、日が変わる直前な時間になっちゃいました。
「よそ様の家で15時間も寝てしまい、申し訳ありませんでした!!」
目覚めて時計を確認した途端に土下座である。夕食・お風呂等で結構物音がした筈なのに、それでも爆睡を貫き、よっぽど疲れてたんだなぁと、素直に感心しちゃったよ。てゆーか、お腹空いてないの?
そして萌香ちゃん母が娘の方を見て
「その、ごめんね。イイ子にしてた?」
「うふふ、してました」
自分で言っちゃったよ。でもまぁ、母さんが家事手伝いを積極的に任せて、それを楽しそうにやっていたから、OKだろう。そしてそれは母も認めている様で、
「萌香ちゃんは、我が家の家事を積極的に手伝ってくれましたよ。とってもしっかりした娘さんですね」
「うふふ、今度はアイロンを教わりたい」
「それは自分のお母さんに教わってね、萌香ちゃん」
そんな萌香ちゃんと我が母のやり取りを、唖然とした様子で見ながら
「名前で呼んでいいの?」
「うふふ、自分を好きになる努力を始めましたので。愛の為に」
「ええ? どういう事?」
あー、そういえば母さんが、自分の名前を嫌っちゃ駄目とか言ってたっけか。それに名前がコンプレックスって件も力技で捻じ曲げたりで、娘の心境変化にビックリしているらしい。
それから今週の出来事を萌香ちゃん母に話し、そしたら萌香ちゃん母の話も始まり、共働きで保護者交流を一切してこなかった事を後悔、いい機会だと判断して我が家を頼ってみたそうだ。なので今後とも宜しくお願いしますという感じで話をしていたら時刻が24時前となり、流石にこれ以上のお泊りは無理なので、萌香ちゃん親子が帰る事になりました。
次でこの話は終了です




