07話 伝えたかった言葉
「小桜さん、どうして毎日来てくれるんですか?」
2日連続で追い出す形になってしまい、もう幼馴染ですら近寄らない状況なのに、今日もこうして小桜さんが来たので、聞いてみる事にした。
????(首を傾げる)
「いや、俺が変な質問してるって反応されましても。そもそも俺と小桜さんの接点って、ないですよね?」
そもそも学校プリントを小桜さんが持ってくるのがおかしい。担任・家が近いクラスメイト・同中だった奴が妥当で、人選が間違っている。なのに小桜さんは善意というか、使命感でお見舞いに来ている感じすらある。そんな至極当然な疑問に、
ガタンッ!!
座っていた小桜さんが弾かれた様に立ち上がり、派手に椅子が倒れる。まるで何か大切な事を伝え忘れてココまできちゃったって感じの焦り顔で、そこからバッと身を寄せてきて、意を決した表情になってから、小桜さんの口が開いた。
「……………っ、ある! 感謝してる!」
お見舞いから3日目で初めて聞けた小桜さんの、まるで絞り出したかの様な言葉はカタコトで、不器用な単語ばかりだ。そして何かを伝えたいのに、その方法が分からないといった感じだ。
初対面でパーフェクトな自己紹介をされたけど、あれはただの情報で、俺は小桜さんについてよく知らない。知らないけど、これだけは分かる。小桜さんが、真っ直ぐな人間だってことが。なので手を伸ばして、目の前で慌てている小桜さんの手を握った。
冷たい。
人間は焦りや緊張で手が冷たくなるらしく、それを解すには、こうするのが一番らしい。それに小桜さんが喋らないなら、こっちも言葉じゃなくて行動で示そう。
「伝えたいことがあるなら、ちゃんと聞きます。どんなに時間が掛かっても、ずっと待ちますから」
入院中だから時間はいくらでもあるし、何度もお見舞いに来てくれた以上、そうするのが礼儀だ。そしてこの言葉に小桜さんが落ち着いてくれて、それから何度も何度も深呼吸をしてから、ゆっくりと答えてくれた。
「助けてくれて、ありがとう」
???
どういう事?と言おうとしたけど、きっと小桜さんの台詞はまだ終わっていない。だから根気よく待ち続けたら、小さな声で呟いてきた。
「妹を」
「そのせいで、怪我をさせて、ごめんなさい」