74話 モヤモヤ
「美夜、夕食ができ…、居ないのか?」
ノックをしてから娘の部屋に入ったけど、真っ暗で誰もいない様だ。
美羽が羽生家に行って3日目だが、こんなに寂しく感じるとは思わなかった。美羽は明るい子で、家族の団欒・食卓があんなにも和やかな時間だと気付かせてくれた、自慢の娘だ。私は父親として未熟で、まだお互いギクシャクしたままだけど、もう焦らずにやろう。美羽だけじゃなく、私にも時間が必要だから。
羽生家には、とても感謝している。美羽は私達家族が大切で、だからこそ遠慮・本音が言えない所があると感じていたから、この件できっと何かを感じてくれるだろう。
そう思いながら部屋を出ようとしたら、よく見ると部屋の片隅に小さな光があり、灯りの消し忘れかと近づいてみたら、
「ひっ!?」
そこには部屋の片隅でアロマ蝋燭を灯し、その僅かな光でホラー小説を読む、体育座りの娘がいました。
「み、美夜?」
我が娘ながら、怖過ぎる。
そう思っていたら、すぐ傍に置かれていた美夜の携帯が光り出し、そこには美羽が、羽生家で楽しそうにしている美羽と羽生君が表示されている。
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その絵をじーーーーーっと見つめた後、美夜が再びホラー小説を読み始める。先程よりも、どんよりとした顔で、
これもきっと、必要な時間だ。美夜は基本的に無関心で、以前なら他人事で一喜一憂しなかった筈で、こういう感情を経験するのもアリな筈だ。筈だけど、早く帰ってきてくれ美羽ーー!!




