73話 羽生家の家計事情
「2人は行ってみたい場所ってある?」
夕食後、美羽・萌香ちゃんにそんな話題をふってみて、返ってきた答えは
「カラオケ?」
「うふふ、二郎系ラーメン屋」
おおう、遊園地とかそういう答えを期待したけど、身近にあるけど小学生(女子)が入り難い場所って感じになっちゃったな。全然OKだけど。
「あと漫画喫茶も興味あります」
「うふふ、牛丼ネギだく」
「分かった。足の怪我ももうちょっとで治るから、そしたら連れてくよ」
この言葉に萌香ちゃんはニヤッと微笑んでくれたけど、美羽ちゃんは渋い顔をして、
「でも、お金が…」
「いや大丈夫だから。遊園地等ならまだしも、近所のやっすい場所だからね」
こういう反応されると、親は困るだろうなぁ。強引に連れて行っても楽しんでくれない可能性もあるし、この貧乏根性はどうにかした方がいいけど、はてさてどうしたものかと悩んでいたら、萌香ちゃんがジト目でこっち見ながら
「うふふ、お兄さんの家計はそんなに大変?」
「いやいや、狭い家だけど、ちゃんと黒字だから」
それからちょっと悩んだけど、我が家の家庭事情を話してみる事にした。
「こんな狭いアパートだから貧乏に見えるし、実際俺が子供の頃は本当に貧乏だったらしいけど、父さんが頑張り続けて、俺が10歳くらいの頃に昇進か何かで盛大なお祝いがあったりしたので、我が家の家計は大丈夫です。それで中学になる前に、近所でもっと広い場所に引っ越すか・ココに残るかの家族会議もあったから」
「うふふ、どうして残ったの?」
「広い場所に引っ越したら、家賃が上がるからね。だからココに残った場合は家族旅行の頻度UPって条件で、その辺りを家族全員で話し合った末、残る事になりました。住めば都って言うし、俺のお小遣いもUP。あと引っ越しも面倒臭かったから」
そう笑ってみせたけど、この話を2人は思いのほか真面目に聞いてくれて、萌香ちゃんが不思議そうな顔をしながら、
「その家族会議、お兄さんも参加?」
「うん、俺も最初は参加していいの?って思ったけど、母さんが『こういう事は家族皆で決めるべき!』って言ってたから」
当時はこの扱いに、結構感動したっけなぁ。しっかりと家族の一員として見てくれたから。
「だから我が家の家計は大丈夫です。それに母さんも不定期にバイトして、プチ贅沢しまくりだよ」
だけど最近はバイト休業中で、これは俺が入院・今も松葉杖だからに違いない。だからさっさと治して、安心させないと。
そしてこの後は萌香ちゃんの家族の話となり、プライバシーに触れない範囲で相談したけど、その間、美羽ちゃんはずっと聞き入ってました。
そろそろこの話(番外編)も終わりです。今週中までには〆たい。




