68話 延長戦
それから母がこっそり小桜家に美羽ちゃんが我が家で夕食という旨を連絡してから、母・美羽・萌香ちゃんの3人で餃子作りをして、夕食となりました。なお、父は残業で帰りが遅くなるので、我が家の女子率が一気に上がった格好だ。
「へー、萌香ちゃんのご両親、2人ともゲーム関係のお仕事なんだ」
「うふふ、父は据置ソフト、母は携帯アプリです」
「凄いねー、我が家の大黒柱はしがない地元サラリーマンよ」
食事時は母が萌香ちゃんに質問・適当に雑談という具合で、ずーーーっと母が萌香ちゃんの言動を観察、いわゆる親チェック中である。
母曰く、一緒に何かして食事をすれば、大体分かるそうだ。
親が子供の交友関係に割り込むのはどうかと思うが、変な友人に唆され、おかしな方向に進むのも駄目なので、これも1つのやり方なのだろう。そして母の反応を見る限り、萌香ちゃんは余裕で合格みたいだ。
「うふふ、大皿のおかずを皆で摘む、新鮮」
「そう? ウチはこれが普通だけど」
「いえいえお兄ちゃん、美羽も慣れないです」
「いや美羽ちゃん、これが我が家の常識だから」
「えっ? ……ああー!! 間違えましたそんな事ないです! 慣れっこです!!」
素が出ちゃった美羽ちゃんが焦りまくりで、ほんと食事中って本性出るな。母さんも笑ってるけど、性格悪いというか、容赦ないなぁ。
そんな感じで小桜家(偽)の夕食が終わり、お願いされて小説を数冊貸してあげてから、母が軽自動車で萌香ちゃんを送迎となり、玄関で2人を見送った後、美羽ちゃんがぐったりと倒れ込んじゃいました。
「美羽ちゃん。なんてゆーか、お疲れ様」
「お兄ちゃん。やっぱりおばさん、怒ってます?」
「いや、怒ってるというより、美羽ちゃんに嘘の面倒臭さを、身をもって伝えたかったんじゃないかと」
子供には注意より体感させる方がいい。
これが我が家の教育方針だからなぁ。
「はい、身を持って思い知りました」
まぁ、時にはこういう荒療治もアリだろう。優等生の美羽ちゃんなら特に。
「明日、萌香ちゃんに謝りますね」
「うん、きっと許してくれるよ。ちゃんと理由を伝えれば大丈夫」
それから2人で夕食の食器を洗ってから、今度は美羽ちゃんを小桜家(本物)に送るべく、俺と一緒に家を出る。ゆっくりな松葉杖移動だけど、食後には丁度いい速度で、そして小桜家が見えてきた所で、
「あれ? 小桜さん?」
家の前に人影がいて、こちらに気付くのと同時に駆け寄ってくる。
「…………………………」
なんか、微妙に気まずいな。
そう感じていたら、美羽ちゃんが前に出て、頭を下げる。
「ごめんなさいお姉ちゃん。あの時は混乱して、変な事をいいました」
コクコク(首を縦に振る)
約束通り美羽ちゃんが謝り、険悪なムードもないから、拗れる事はないだろう。だけど簡単な経緯くらいは俺から説明しておこうとしたら、後方からクラクションが鳴り、それは我が家の軽自動車でした。
「ふぅ、間に合った」
「母さんお疲れ。ちゃんと萌香ちゃんを送り届け……、てないね?」
てっきり届けた帰りだと思ったのに、何でまだ車にいるの? てゆーか、来た時よりも荷物が多くなってるような? そう誰もが疑問に思っていた所で、我が母が宣言をした。
「今日は我が家で、お泊りパーティよ!!」
何でだよ!!!!




