61話 出来たて兄妹
脇が痛くて学校を休みました。
どんな欠席理由だよ!って自分でも思ったけど、昨日帰った後に脱いだら、一日中擦れ続けた脇がもう真っ赤で、今朝になってもヒリヒリが治まらず、大事を取りました。
だけど、まだ大丈夫だけど、いきなり入院でドカッとバカンス取得した身分なので、落ち着かない。留年は基本1/3、つまり1年で約200日ある学校で60日休むと進級不可。なので今後更に休んだら、ヤバいかもしれないのだ。
だから午前中は真面目に自習したんだけど、そんなやる気も昼過ぎに消失、買い物に行く母を見送ってから、昼寝となりました。
いや、実際昨日は帰り遅かったし、脇ヒリヒリで寝不足なのだ。そんな言い訳を重ねて、皆が勉学に勤しむ時の居眠りはサイコーだなーと思いながら、眠りにつきました。
◇ ◇ ◇
「ん? …………………………んん~?」
気配を感じたので目覚めてみたら
「あ、起きちゃいました?」
正解は俺の布団に侵入しようとした美羽ちゃんでした。
………………何でだよ!?
「美羽ちゃーん。ビックリしちゃうから止めてねー」
「えへへー、それが目的ですー」
兄っぽい存在が嬉しい、或いは楽しいらしく、毎日小学校帰りに立ち寄り、日に日にスキンシップが激しくなってく美羽ちゃんなのだが、遂にここまできたか。
最初は落ち着かなかったけど、何事も慣れだ。確かに美羽ちゃんは可愛いけど、残念ながら色気はない。俺のロリコン指数が危険値に達する予兆もないが、冷静な塩対応で流されるのが美羽ちゃん的には面白くないらしく、更に攻めてくるイタチごっこが続いていて、そろそろ終わらせた方がいい気がする。
「お兄ちゃん。お姉ちゃんの携帯に休むってメールありましたけど、大丈夫ですか?」
「うん、昨日動き回って疲れただけだから」
「あー、そういえばそうでした。昨日はお姉ちゃんと、ずーーーっと一緒でしたねー」
ん? 何か雲行き怪しい?
そう思った後、美羽ちゃんが両手を差し伸べてからの満面スマイルで、
「お土産は?」
「…………………………ごめん。ありません」
松葉杖だと荷物を持つのが困難で、それに昨日は遠出と知らず手ブラで、ついでに小桜さんもお土産は買ってなかった気がする。
「ぶー、酷いです」
「ごめん美羽ちゃん。今度埋め合わせするから」
「ほんとですか? 約束ですよ」(にこっ)
あれ? 誘導尋問というか、思惑通りに動かされた気がする。さっきまでの拗ね顔も一瞬で笑顔に戻ったし、これが妹ってやつなのか? 兄妹歴が1ヶ月未満だからよく分からん。
ピンポーン
「私が出ますね」
そう言ってリビングのインターホンに美羽ちゃんが直行。一応俺も松葉杖を手に取って、ゆっくり後を追う。
「はい、小桜です」
「いや、美羽ちゃん。ココは羽生家だから」
「あっ、間違えました! 急いで玄関に行かないと!!」
美羽ちゃんの応対が終わった後に指摘したら、ペコペコと謝ってから直行しちゃったけど、相手は小桜って名乗ったのに変だと思わなかったのか? なので一応俺も玄関に向かってみると、
「うふふ、こんにちは。小桜さん」
「つ、月山さん!? どうして!?」
玄関にランドセルの女の子が居て、2人の様子から察するにクラスメイトみたいだ。そして月山さん?がこちらに気付いて、
「うふふ、あなたが小桜お兄さんですね。月山といいます。お噂はかねがね」
独特な笑い方をする月山さんは、美羽ちゃんと同じく小柄で、くせ毛が無造作に後ろに束ねられており、ジト目でこっちを見てくる、低音でゆっくりとした喋りという、独特な雰囲気の子だ。
「とりあえず、上がってどうぞ」
「ありがとうございます。小桜お兄さん」
「いや、確かに俺は美羽ちゃんから兄として慕われてるけど、正確には羽にゅ…」
ちゃんと自己紹介しようとしたのだが、何故か美羽ちゃんが遮る様に入ってきてから、
「何言ってるの? お兄ちゃんは本当の兄で、名前も小桜夕だよね? お兄ちゃん」
えっ、……………えええええぇぇぇぇぇええ!!!?
留年ルールは学校によってまちまちです。厳しい場所は40日、遅刻3回で欠席1日とカウントする場合もあります。




