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小桜さんは義理堅い  作者: 奈瀬 朋樹
第1章:入院生活編
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05話 お見舞いの品

…………………気まずい。


小桜さんがベッド傍の椅子に座ってくれたけど、全っ然目を合せてくれない。嫌わているのでは?と思ったけど、もしそうならお見舞いに来ない訳で、だったらもう待つしかない。


「ええっと、来てくれてありがとうございます。小桜さんが落ち着くまで、いくらでも待ちますので」


そう伝えてから、中断していた読書を再開させる。無理に話しかければまた焦り出し、かといって凝視も駄目っぽいので、今は落ち着かせるのが最善だろう。そうして静寂が訪れた後、小桜さんの首がこちらを向いてから、胸に手を当てて深呼吸をしている。そんな仕草をこっそりと盗み見していると、持参したエコバックの中身をベッド横の机に置き、幾つかの封を開けて、差し出してきた。


「貰っていいんですか?」


コクコク(首を縦にふる)


差し出されたのはビーフジャーキーとエナジー飲料で、普段なら大歓迎だけど、


「すみません。今は食欲が……」


という台詞を漏らした途端、みるみると小桜さんの表情が陰っていき、どよーんとした顔でビーフジャーキーを引っ込めようとした所で、


「いや、やっぱり大丈夫です! 看護師さんからも、もっと食えって言われてますので!」


やべー、ここは男なら死んでも食べなきゃダメな場面だった。そんな自分の鈍さに猛省しつつ、奪い取ったビーフジャーキーをエナジー飲料で流し込む。


「とっても美味しいです!」


ワザとらしさ全開だけど、小桜さんは一安心な反応だからOKだろう。ただ、お見舞いの食べ物がちょーっと独特な気がする。


「健康的なものばっかりですね」


小桜さんが持ってきたのはビーフジャーキー、ナッツ、バナナ、エナジー飲料、カロリーメイト等で、早く怪我を治してねっていうより、もっと食べてムキムキになりなさいって感じだ。


そんな筋トレ食品一式に疑問を感じていたら、小桜さんが1枚のプリントを取り出し、それは俺が昨日書いたプロフィールだった。そしてスリーサイズ項目にマーカーが引かれ、赤字で「やせすぎ」という注意書きが入っている。


やべぇ、いらん心配させちゃったよ。


今までは小桜さんが焦ってばかりな展開だったけど、まさかの立場逆転に言葉が詰まる。悪気はなかったとはいえ心が痛い。てゆーか今現在も小桜さんの”体調が心配”という視線に晒されていて……


「すみません! そのスリーサイズですが、適当に書きました!」


????(首を傾げる)


「男なので自分のスリーサイズ気にした事なかったんです。服を買う時もMサイズとか、実際に試着したりで。だからその数字は小桜さんのスリーサイズ情報を参考に……」


あ、しまった。

言葉のチョイスを間違えた。


すぐ口を閉じたけど、完全に手遅れで、恐る恐る小桜さんの顔を見てみたら、超真っ赤で、ぷるぷるしちゃってる。


全力で脳をフル回転させてるのに、正解が出てこない。そしてこの沈黙は拷問に等しい。俺は動けないし、いっそ昨日と同様に小桜さんが逃げ出してくれたらと神に願ってみたら、


ガタッ!


小桜さんが顔を真っ赤にしたたまま、意を決したかの様に立ち上がる。だけど視線は俺を見据えたままで、退陣どころか、ゆっくりと俺に迫って来る。しかも手に、メジャーを握り締めながら。


そんなに知りたかったの!?

俺のスリーサイズ!!!

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