52話 謎のご褒美
「これが、テスト結果です」
「おおっ、全部それなりに取れてんな! やるな後輩!」
「オール入院で赤点なしとは恐れいったぞ」
返却された5教科を小桜さんに渡し、檜山先輩・織田が感嘆って反応を示してきた。小桜さん監修の下、高校受験並に勉強しまっくたから、これで赤点あったら泣いてたぞ。これで全部90点以上とかなら格好良かったけど、やっぱりオール欠席のハンデはデカかった。その証拠が、
「んんっ? 社会だけ赤点ギリギリだな。てゆーか、最後全滅じゃねーか」
「そこは試験範囲が追加された部分で、その情報が伝わらかったので」
「ひっでぇ!! イジメか!!!」
檜山先輩が吠えたが、これは本当に先生側のミスで、テスト返却時に謝罪されました。
「兎に角、小桜さんのおかげで赤点回避できました。本当にありがとうございます」
パチパチパチパチ
そう頭を下げると、小桜さんが拍手をして、更に2人も拍手をしてくれました。すっごい嬉しいけど、それ以上にホッとできた。これで中間テストに纏わるイベントは全て終りょ…
「……………………………………………………ご褒美」
「えっ? ……………ああっ!!!」
そういえば俺のヤル気を出す為に、そんな約束したな。すっかり忘れてた。
「んん? 小桜、後輩に何かしてやるのか?」
コクコク(首を縦に振る)
「一体何を?」
モジモジ(照れ臭そうにする)
ガシッ!(胸ぐらを掴まれる)
「をい後輩、その怪我を盾に、なに約束した?」
「いや! ご褒美内容は小桜さんが決めた事で」
「ほんとか小桜?」
コクコク(首を縦に振る)
「内容は?」
モジモジ(やっぱり照れ臭そうにする)
ガシッ!(やっぱり胸ぐらを掴まれる)
「吐け! どんなご褒美だ!」
「ええっと、それは……
あれ? そういえばご褒美って何だ?
確か小桜さんがやりたい事を紙に書かせて、病院ベッド横の棚に入れて、それから勉強漬けの日々で、そのまま確認せずに退院して…………………、今日に至っちゃったよ!!!
「いや、ここは秘密という事で」
「じゃあこれだけ教えろ!! エロじゃねーよな!!」
「それは勿論! ……多分」
「どっちだよ!!!」
いや、俺も分かんないです! だけど自分が発案者で、もしかしたら小桜さんがご褒美の用意を頑張ってくれたかもしれなくて、なのに「ごめん。忘れてた」なんて言える訳がない! だったらもう、分かったフリで押し通すしか。
「ちっ、白状しねーか」
そう言い捨てた後、檜山先輩が小桜さんに言い寄り、そして織田はスッと小声で、
「羽生、必要なら薬局に同行してやるぞ」
旧友の気遣いが胸に染みる。絶対勘違いオチだけど。
「をい小桜、自分を大切にしろよ! クラスで大学生の彼氏自慢してる奴いるけど、そーいうのは気にするな! 人それぞれで比べるもんじゃねーからな!!」
そして檜山先輩は友達思いだな。見た目とのギャップが激しいと感じていたら、織田が前に出て
「でも檜山先輩って彼氏いますよね? だったら、そういう経験も…
バシッ!!!!!!
「あべし!!」
「ちょっ、バーロー!!! 俺達はまだ高校生だぞ!!!」
「檜山先輩、今のビンタがフルスイング過ぎて、織田が再起不能になりました」
そんなこんなで、小桜さんのご褒美が謎のまま、週末の日曜朝に駅前集合になったけど、一体、何が待ち受けているのだろう。




