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小桜さんは義理堅い  作者: 奈瀬 朋樹
第3章:謎のご褒美編
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46話 バリアフリー初心者

階段を上がって切符売り場・改札・階段を降りて電車という、ありふれた駅構造だけど、段差ばっかりで、しかも朝の駅は人が多いから、ぶっちゃけもう帰りたいなぁ。だけど今更帰るのも面倒臭いので、諦めて階段を上り始める。


階段移動は特に慎重にすべき場所で、まずは両サイドの松葉杖をしっかりと地面に固定、次に怪我をしていない右足を上げて、その後に松葉杖を右足と同じ段に上げる。そうして1段を両足でちまちまと上っていく、果てしなき苦行だ。


きっついけど、ココは一気に駆け上がろう。これ以上の時間ロスは避けたいし、階段で辛そうにしていたら周りから注目されてしまう。そうして心配そうな小桜さんを尻目に突き進み、約半分を上った辺りで、


   つるっ


「あっ」


やばっ、死んだかも。

左の松葉杖を踏み外し、体が斜め後方に傾いた所で、


   ガシッ


後方から抱きしめられ、助けてくれたのは小桜さんだった。咄嗟の行動だったらしく、荷物を投げ捨て、今も目を瞑ったまま、力強く抱きしめ続けている。そんなシチュエーションと危なかった状況に、心臓がドキドキしっぱしでいたら、


カラカラカラカラカラカラカラカラ……


手放した片方の松葉杖が面白い様に階段をリズミカルに駆け下り、止まることなく駅の入り口に移動しちゃいました。そういえば子供の頃、テンポ良く階段を降りていくバネのおもちゃで遊んだなぁ。そんな現実逃避をしてもこの状況は変わらず、周りから注目されている事に気づいて、


「ごっ、ごめんなさい。ごめんなさい!」


ペコペコ(頭を下げる)


周りからの迷惑そうな視線に居た堪れなくなり、勢いで全方位に謝罪。なにやってんだかなーと思っていたら、


「おーい、大丈夫?」


後ろ髪を緩い三つ編みで結ったお姉さんに声をかけられ、手には落とした松葉杖を持っていて、小桜さんが落とした荷物まで拾って渡してくれました。


「すみません。ありがとうございます」


ペコペコ(頭を下げる)


「全然気にしなくていいよー。大変そうだね、松葉杖」


「はい。見ての通りです」


と、見知らぬ親切なお姉さんに心配されていたら、



「じゃあ、何でエレベーター使わないの?」



「あっ、……………ああっ!! そういえば!!」


確かこの階段裏にエレベーターあったけど、使った事ないから存在忘れてた! 看護師の森谷さんから公共施設はバリアフリーあるからね~って助言もらってたのに! そしてこの事実に気づけなかった小桜さんもショックだったらしく、俺に頭を下げまくっている。


「そっかー、知らなかったなら仕方ないね。ドンマイだよ。ちょっと待っててね。駅員さんにヘルプ出しに行くからー」


そうして三つ編みお姉さんが手際よく行動してくれて、駅員さんの助力で階段から脱出。その後、仕事があるからと出口に向かうお姉さんにお礼を言ってから改札口に移動。駅ホームにはエレベーターを利用してスムーズにたどり着けたのだが、電光掲示板を見て、心が折れそうになってしまった。


遅刻確定である。

階段を降りるバネのおもちゃの名称は「スリンキー」「レインボースプリング」等で、ひと昔前にそこそこ流行りました。今は500円くらいで売ってます。

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