04話 餌付け
車に跳ね飛ばされ、救急車で大病院に搬送・処置を行った後、後遺症もなさそうという事で、俺は地元病院に転院という流れとなり、そこは小さいながらも綺麗な所で、丁度個室が空いているから使っていい事になった。
ちゃんと大人しくするのでお構いなくと伝えたが、4人1室の大部屋は老人ばかりで、若い患者は俺だけなので大部屋に行けばお互い気を使うという病院側の配慮だそうだ。てゆーか、左足が包帯グルグル巻き・背骨も完全固定という有様は、ふつーに個室で絶対安静コースらしい。
そして転院から翌日、早くも入院生活に飽き始めた時に小桜さんが来たのだが、結果はあの有様。もう来ないっぽいなぁ。だけど退院したら、ちゃんとお礼を言いに行こう。そう思っていたんだけど、今日も高校が終わってから一直線に来たと分かる時間に、また来てくれました。
チラッ (こちらを見ている)
「あの、小桜さん。昨日はすみませんでした。だから入ってきてくれませんか?」
朝からスタート中の小説消化が4冊目になった所で、病室の扉がちょっとだけ開き、だけど誰も入ってこないので風かな?と読書を再開しようとしたら、ぴょこっと小桜さんの顔が扉の隙間から半分だけ出てきて、こちらを覗き込んでいる。
じーーー(様子をうかがっている)
「小桜さん。見ての通り俺は動けないので、何もできませんから」
俺が動かせるのは両手だけで、スイッチでベッドは起こせるけど、それだけだ。もう”鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥”精神で待った方がいいのかな~と考えていたら、扉の隙間から手が入ってきて、そこにはエコバックらしき袋が握られており、どうやらお見舞いの食べ物みたいだ。
パサッ
だがその袋は扉の入り口に置かれ、手が引っ込んでしまった。
じーーー(様子をうかがっている)
俺は餌付け中の動物か!
「あのー、そこに置かれても取りに行けないです」
そう言った後、両手で顔を隠す仕草になり、どうやら照れているらしい。あはははは(棒)。それから顔を真っ赤にしつつ、観念したかの様に、おずおずと部屋に入ってくれました。