36話 小説のすゝめ方
「うーん、お兄ちゃんも小説好きなら、私も読んでみようかな?」
「それは嬉しいけど、無理して読む必要ないよ」
「それはそうですけど……」
小学生に文字だけの小説はハードルが高い筈で、俺も中学生からハマった口だ。だけど俺と小桜さんが共に小説好きで、仲間外れの気分らしい。それに読みたいって意思を無碍にしたくない。だったら、
「美羽ちゃん、ラピュタって知ってる?」
「知ってます。ジブリはとっても大好きです」
「じゃあ、その原作読んでみる? 映画のアフターストーリーもあるよ」
「ほんとですか!? 読んでみたいです!!」
そうして美羽ちゃんに『天空の城ラピュタ』の原作となった2冊の小説を本棚から差し出すと、とっても嬉しそうに受け取ってくれました。
初心者には読みやすい小説がセオリーだけど、興味をそそられる作品っていう観点も重要だ。あと『魔女の宅急便』も35歳まで続く壮絶ストーリーで全6巻、『紅の豚』も『飛行艇時代』というのが原作で、この事を美羽ちゃんに伝えたら、普通に驚いてくれました。
因みに『となりのトトロ』にも原作があるらしいけど、あれはちょーっとエグい内容なので、伏せておきました。
「ありがとうお兄ちゃん! 早速読んでみますね!!」
「うん、急いで読む必要はないし、合わないならすぐ返却でいいから」
「はい!」
そうしてラピュタを読み始めた美羽ちゃんを、小桜さんがじーーっと見つめている。
「小桜さんは、美羽ちゃんに小説を薦めなかったんですか?」
「…………………………………」(首を傾げる)
この質問に、小桜さんが微妙な表情を返してくる。これはどういう意図かな?と思案していたら。
「お姉ちゃんの本は全部怖くて美羽には無理です。本棚もタイトルが見えない様にミニカーテンを付けてますので」
「あ、ああ。成程ね」
確かに、ホラー小説は敬遠されても仕方がない。
それからワクワクしながら小説を読み始めた美羽ちゃんを、小桜さんがどよーんとした顔で見守っていたので、俺は『となりのトトロ』の小説を小桜さんに貸してあげました。何事も適材適所である。
しかも「となりのトトロ」「火垂るの墓」は同時上映、なので当時の子供達はトトロを見た後に火垂るの墓という、酷過ぎる落差にショックを受けまくったそうです。なお「となりのトトロ」原作は都市伝説レベルで、宮崎駿監督も原作はないと否定しています。もし気になった方は調べてみて下さい。




