27話 男をダメにするクッション
「つ、疲れた」
自宅アパートは何1つ変わってなかったけど、エレベーターがなく、3階までの階段移動がここまで大変とは思わなかった。なので今は退院祝いの買い物に出た母を見送ってから、自室の布団にぶっ倒れている所だ。
「とりあえず休んでから、今後の事を考え……」
ピンポーン
「はいはー……い゛」
やべぇ、普段なら即対応できるのに、すぐに立つ事すら出来ない。病院で移動レクチャー受けたけど、スピーディは無理だ。隣のリビングですら遥か彼方に感じる。
ピンポーン
2回目のコール。どうにか立ち上がり、松葉杖で移動中だが、まだ玄関どころか自分の部屋を出ようとしている所だ。来訪者には悪いけど、もう無理っぽいとリビング到着と同時に諦めようとしたら、
「げっ! 小桜さん!!」
リビングの壁に設置された室内インターホンモニターに、困り顔の小桜さんが表示。なので気合で加速、どうにか応答に出れたけど、
「小桜さん? 小桜さーん! くそっ、留守と思って帰ったか!?」
折角来てくれたのに、このまま返す訳には!!
気合を入れ直して玄関に直行、まだ左足は包帯グルグルだけど、半分までの体重負荷なら許されている。なので今まで以上に荒っぽく移動して、最後は倒れ込む様に玄関の扉をこじ開けた。
ドガシャ!!
「がっ、痛い。……まさか、ここまで移動が大変だったとは」
玄関から上半身だけ出した状態でぶっ倒れて、そんな呻き声を漏らす。頑張ったけど、駄目だったか。もう気合で動いた反動・ガッカリ感で、そのまま微動だにせず倒れたままでいたら、
タッタッタッタッ
走る足音が近づいてきたので頭を上げてみたら、涙目の小桜さんがいました。
「あぁ、小桜さん。いらっしゃい」
コクコクコクコク(首を縦に振る)
「すみません。今は俺しかいなくて、出るのに時間かかっちゃいました」
ブンブンブンブン(首を横に振る)
あぁ、また困らせてしまった。こうなったらもう小桜さんは絶対気にして、その分だけ恩を返そうとする、義理堅い性格だ。それが魅力でもあるんだけど。
「とにかく、家に上がっ、で」
この反応に小桜さんが青ざめてしまい、急いで言葉を付け足す。
「いや、大丈夫です。急いで移動して疲れただけです。情けない恰好ですが、ちょっとこのまま1分、いや30秒でいいので待って下さい」
そう伝えた後、うつ伏せ状態のまま息を整えていると、小桜さんが俺のすぐ傍で正座をしてから、俺の頭を優しく掴んでから、自分の膝に乗せてくれました。
「ふごっ、小桜さん?」
顔を上げようとしたら、押さえ付けられてしまい、うつ伏せな俺が強制膝枕という格好になってしまった。
何これ? どういう事?
状況を整理すると、小桜さんの太ももダイレクトで息がし辛くて、制服スカート越しの膝枕が超柔らかくて、さっきまでの固い地面とは雲泥の差……、って、だからこその膝枕!?
いやでも待って、これ全然休めない!!
てゆーか、玄関で膝枕プレイをお隣さんに見られたら噂になっちゃうから!!
だけど俺も男なので、このシチュエーションを拒めず、男をダメにするクッションをじっっっくりと堪能(結構な時間)してから、小桜さんに体を起こしてもらい、家にあがってもらいました。あと、幸いにも目撃者はいませんでした。
このシチュエーションを考える際に「逆膝枕」で検索したら、『なぁ、逆膝枕ってどう思う?』というサイトの冒頭で笑ってしまいました。後半はグロ展開?でしたけど。(汗)




