26話 退院
GW前日の昼、遂に退院だ!
打ち身状態だった背中は完治、松葉杖も問題なく使える様になり、あとは午後過ぎに母さんが来て、最後の診断をしたら、退院だ。
「は~い羽生君、最後の晩餐だよ~」
「それただの病院食ですよね? 確かに最後ですけど」
昼食を持ってきた森谷さんに恒例のツッコミを入れたけど、これも最後になっちゃうのか。退院は喜ばしいけど、ちょっと寂しいかな。
「森谷さん、今までありがとうございました」
「うん、無事に退院で何よりだよ。おめでとう」
そんな畏まった挨拶をしたけど、お互いらしくないなーと感じて、2人して笑ってしまった。
「森谷さんのおかげで楽しかったですけど、いっつもこんなノリなんですか?」
「ん~、そだよ~。病は気からって言うし、明るく振る舞って患者に元気を~が私の心情だから。でも、前にいた大病院では、ちゃ~んと真面目だったよ~」
「そうなんですか?」
「うん。だけど色々あって、転院したの。私にはこういう小さな場所で自由にやる方が性にあってるから。だからこんな不真面目ナース、他にはいないからね~」
「あはははは、知ってます」
「だけど羽生君の看病は本当に楽しかったよ。素直で冗談通じるし、何よりも小桜さんってオプションが付いてたからね~。足が治ったら、ちゃ~んとデートするんだよ~」
「またそうやって茶化す。じゃあ森谷さんの恋愛はどうなってるんですか?」
と、踏み込んだツッコミをしてみたら、
「大丈夫、もうすぐ結婚するから」
「えええええええええっ!! そっ、マジですか!!!」
「うん、マジのマジマジだよ~」
軽い口調だけど、こういう冗談は言わない人で、どうやら本当みたいだ。
「お、おめでとうございます。じゃあ看護師、辞めちゃうんですか?」
「うん、近々ね。だけど看護師は入社より退職の方が大変でね~、面接官も退職の方が多いくらいで、辞めるのも1年がかりだよ~。後釜やら何やらで。もうすぐ来る新人に引き継ぎして、私の看護師生活は終了かな」
「そうだったんですか、お疲れ様です」
何故か祝う相手が逆転しちゃったけど、嬉しいな。それに森谷さんなら、きっと幸せな家庭を築けるだろう。
「じゃあ結婚式をするなら、是非呼んで下さいね」
「勿論、小桜さんとのペアでご招待するからね~」
そんな馬鹿っぽいやりとりをして、森谷さんが仕事に戻っていった。そして母親到着、主治医と話した後、笑顔の森谷さんに見送られながら、めでたく退院となりました。
怪我で1ヶ月も立ち止まっちゃったけど、貴重な経験ができた。明日からGWだけど、テスト勉強に励もう。勿論、小桜さんと一緒にね。
これで1章終了です。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。




