23話 病院の都市伝説
※ホラー要素有り
「『死体洗いのアルバイト』って本当にありますか?」
「そんなのないよ。ただの病院あるある都市伝説だから~」
消灯前に森谷さんが来たので聞いてみたら、やっぱりな反応である。小桜さんのホラー小説にそういう話あったけど、やっぱりか。まぁ、当然……
「でも『死化粧』なら、看護師がやってるよ」
「ええっ!? その、聞いてもいいですか?」
「う~ん、結構怖いというか、生々しい話になるけど、大丈夫?」
「……………大丈夫です。無理なら途中でストップしますので」
それからの僅かな静寂が合図となり、自然と2人して神妙な面持ちで見つめ合った後、森谷さんが小声で語り始める。
「病院で亡くなった患者さんは清拭、つまり身体を清潔にする必要があるの。家族とのお別れ・葬儀があるからね。そして遺体に触れるのは穢れを伴うって考え方があって、遺体を入浴させる『湯灌』、『死化粧』は女性が行うべしって習わしが今も残ってるの」
「……じゃあ、森谷さんも」
「うん、経験あるよ。それが看護師の役目だから。それに亡くなる直前まで看病した相手なら、ね」
「……そう、ですか」
確かに病院でそういう事があるのは当たり前で、当然の役回りだ。ただでさえ看護師は忙しいのに、そのうえこんな事まで……、もしかしたら接客業で一番大変な業種は、看護師なのかもしれない。
「俺、これからは看護師を最も尊敬できる職業って認識にしますね」
「あらあら、それじゃあ羽生君は、私を尊敬してるのかな?」
「当然です。てゆーか感謝しまくりですよ」
そう言うと森谷さんが微笑んでくれたけど、いつもより印象深い笑顔に思えたのは、気のせいかな? いや、気のせいじゃないって事にしておこう。
「うふふ、ありがとう。あとさっきの話題は、使い所に注意してね」
「当然です。こんな話、ホラー好きの小桜さんくらいにしか出来ません」
「えぇ~、それこそ使い所間違ってない?」
「あはは、そうかもです」
そう2人して小さく笑ってから消灯時間となり、森谷さんを見送ってから、俺は眠りについた。




