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小桜さんは義理堅い  作者: 奈瀬 朋樹
第1章:入院生活編
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01話 ささやかな入学式

 誰?


 今日から通う筈だった高校の制服ブレザーで、首元のリボンが赤だから、2年の先輩かな?


 外見はサラリとしたボブヘアで大きな眼鏡、運動が苦手そうなほっそり体型、物静かで何処かミステリアスな雰囲気を漂わせる女性だ。何故ここまで特徴を事細かに説明できるかというと、彼女が俺の前に立ってから、全く動かないからである。


 なのでお互いにらめっこ状態だけど、大きな眼鏡なうえに前髪まで長いから、いま目線が合っているのかさえ定かじゃないけど、とりあえず挨拶しようとしたら、思い出したかのように先輩が鞄を漁り、無言でプリントを差し出したので受け取ってみると。


「あっ、これ学校のプリント!」


 学校行事スケジュール・クラスメイト一覧・高校生の心得など、今日貰うのを諦めていた資料だ。これは後々貰えるけど、頑張って合格した高校だからこそ、やっぱり入学式の日に受け取り、目を通したかった。まだクラスメイトの顔が1人も分からないけど、それでも今日、皆と同じ日に受け取れた事が、とても嬉しい。


「ありがとうございます! すっごい嬉しいです!!」


 怪我で背中が曲げられないので、精一杯の笑顔で感謝を伝えたら、今度はスマホが差し出され、その画面を覗いて見ると、それは入学式の風景だった。


「わざわざ録画してくれたんですか?」


 この質問に、先輩がコクコクと首を動かす。


 そうして映像再生が始まり、体育館内にびっしりと並んだ座席に新入生が次々と着席していき、全生徒が着席した後、司会の生徒が「国歌斉唱」と叫ぶ。それから静寂が訪れた後、一斉に歌い出した。



『きーみーがーあーよー  ブツッ


「あれ?」



 突然の映像切れに何事かと視線をうつすと、それは先輩にとっても予想外だったらしく、ブンブンとスマホを振る姿に、なーんとなく察した。


「えっと、誰にでもミスはありますし、もう入学式の雰囲気は十二分に堪能できましたので」


「……………………………………………………」


 咄嗟にフォローしたけど、先輩はどよーんな表情?で沈黙していて、もしかしたら入学式の間、ずーーーっとスマホを構えていたのかもしれない。もしそうなら、ご愁傷様です。ここは笑う場面かもしれないけど、ずっと無表情で、てゆーか全然喋ってくれないから、どう反応していいか分からん。なので先輩を見守っていると、諦めて携帯をしまった後、ゆっくりとこちらに来てから、俺の胸元をまさぐってきた。


「ちょっ、先輩!?」


 こっちは負傷しているから抵抗できず、しかも女の子に迫られる経験もなくて、このまま襲われちゃうの?って思ったら、程なくして先輩が引き下がってくれた。


「あっ、あの。今のは一体」


 そう尋ねると、俺の胸元に指をさされたので見てみたら『ご入学おめでとう』と書かれた花飾りが付いていた。


「これって? 入学式に付けるアレですか?」


 この反応に、コクコクと首を動かしてくる。


 パジャマでこの花飾りは不格好だけど、それでも今日は外さずにいよう。こんな入学式を経験したのは、きっと俺だけだろう。だけど、いい思い出になった。


「ありがとうございま…


  ドサッ!!


 お礼を言い終える前に、今度はプリントの束が渡される。


「これも、学校のプリントですか?」


 この問いに対して、今度は横に首を動かしてくる。

 じゃあ何だろうと見てたら、そこにはこう書かれていた。


『アンケートにお答え下さい』と

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