17話 意外な趣向
小桜さんに貸す本、どうしよう。
昨日は約束に舞い上がってしまい、好みのジャンルを聞きそびれたのは失態だ。小桜さんなら何でも喜んで受け取りそうだけど、本好きである以上、適当に貸すなんてありえないのだ!!
うーん、王道ベストセラーの恋愛小説が無難だけど、ラノベでもいい気がする。テンプレハーレムじゃない作品もあるし、或いは映像化作品はどうだ? 「倍返しだ!」の銀行マン物語も……、駄目だキリがない。
視点を変えよう。人に初めて本を貸すなら、読みやすい・ページ少なめって条件は外せない。その中で自分のお気に入り作品にしよう。できれば感想を語り合いたいから。……語り合えるのか?
そんな推察で、ちょっとSF要素のある恋愛小説を選んだ。これは読みやすくて頁も200ちょい、アマゾンレビュー高評価、映像化もした大ヒット作品で、何よりも自分が大好きな物語だ。
そんなこんなで小桜さんがそろそろ来る時間になったのだが
「うわっ!! 何その重そうな袋!!」
大きめなトートバッグにギッシリと本が詰められていて、20冊はあるだろう。確かに冊数の指定はなかったけど、まさかの大漁である。
「あ、ありがとうございます。因みに、どんな本を?」
そう言うと、嬉しそうに本を差し出してきたのだが
・怪談100物語
・本当にあった怖い怪談シリーズ
・百鬼夜行
・家がお化け屋敷
・スクールオブゾンビ
・かにみそ etc
ええー、全部怖い話っぽい!!
確かに、小桜さんにはミステリアスな印象あるし、寡黙だから、こういうジャンルが好きなのは不思議じゃない。それに本の好みにケチをつけるのはご法度だ。
「じゃあ、毎日少しずつ読んでみますね」
この返事に、小桜さんがニッコリ笑ってくれました。
別にホラーは苦手じゃないけど、病院で怖い話を読むのはなぁ。ホラー話にあてられた後に病院のベッドで夜を明かす方が怖い気がする。だけど森谷さんは「病院はお化けより認知症患者の徘徊の方が怖い」って言ってたし、大丈夫……
あれ? そういえば俺は今ベッドから動けず、トイレにも行けないオムツ野郎だ。なのにホラー小説を読んで怖がってしまい、そのままオムツで致すのは、すっげー羞恥プレイじゃないだろうか?
勿論これはおもらしじゃない。ないけども、もの凄く抵抗がある!! そうして小桜さんが持ってきた本と睨めっこをしていたら、すぐ横でご機嫌そうな小桜さんの顔が目に入って、退路がない事を悟った。こんな理由、女の子に説明できる訳ないじゃん!!
こうしてホラー漬けの日々が始まる事になったのだが、ちゃんと寝られるかなぁ。因みに、俺が選んだ本は快く受け取ってくれました。
小桜さんが持ってきた本タイトルはほぼ適当です




