16話 テレビがある限り、奴等は必ず来る
「ふぅ、本日の勉強終了」
お見舞い時間の殆どを勉強に費やしたから、本当に疲れた。入院ベッド用の机で一緒に黙々と勉強。特に小桜さんの集中力は凄まじく、その勢いに引っ張られた格好だ。
分からない部分は何処を参考にすべきか的確に示してくれて、数学の途中式をしっかり描いてくれたりと、やっぱり小桜さんの成績は上位らしく、大きなメガネは伊達じゃない様だが、教える時もやっぱり無言でした。
「今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」
コクコク(首を縦にふる)
そう満足げ?に頷いた後、帰り支度を始めた小桜さんだったが、病院のテレビを物珍しそうに見つめている。
「見たい番組があるならどうぞ。これがリモコンです」
それから小桜さんがテレビをつけた後、チャンネルを回したり、テレビ横に付いてるカード差し込み口を気にしたりで、どうやら病院のテレビ本体に興味があるらしい。
「カード式テレビで、販売機で売ってるカードを差し込みます。それ以外は普通のテレビと同じ筈ですよ」
コクコク(首を縦に振る)
この言葉に、成程という感じで小桜さんが頷く。
「因みに値段は1分1円、2時間番組なら120円で、地味にたか……
ブツッ
俺の台詞が終わるより早く、テレビをシャットアウト。それから小桜さんがワタワタした後、自分のお財布から1000円札を差し出してきた。
「いやいやいりませんって! テレビ付けてたのも数分でしたから!」
フルフル(首を横にふる)
「いやでも……」
フルフル(首を横にふる)
「じゃ、じゃあそれは小桜さんの家庭教師代とか、お見舞い品の対価という事で!」
この提案に沈黙した後、納得?してくれました。やっぱり小桜さんは頑固な所があるみたいだ。今後は気を付けよう。
因みに、病院のテレビについて看護師の森谷さんに質問した事があるけど、これは外部業者の委託ビジネスらしい。病院にも利益があってテレビ設置費用・管理費の削減、そして委託業者も少ない労力で安定収入というWin-Winの関係だ。だけど無料の方が消費者としては嬉しいと進言してみたら。
無料設置だとN●K集金が来るから
という言葉にぐうの音も出ず、ひれ伏しました。因みに、ネット利用(ノートPC貸し出し・wifi利用)もオプション料金で利用可能となっている。そして俺はいい機会だから、積みゲー状態の小説消化に専念しているのだ。
そうして小説を読む準備をしていたら、今度は小説が気になる様で、各小説タイトルをまじまじと見つめている。そういえば小桜さんの趣味は読書だったっけ。
「入院で時間が有り余ってるので、本の消化をしてるんです。去年は受験で小説封印・買うだけの日々だったので、親に頼んで部屋の本を持ってきてもらってます。あと気になった本は何でも読んでみるが自分のスタンスで、友達とお互いのお薦め本を貸し借りしてました」
本の数だけ作者のメッセージがある。それを文字を通して理解し合うのが、たまらなく面白いのだ。だから小学校からずーっと図書室・図書館で本を借りまくりである。
「…………………………」
この言葉に小桜さんはやっぱり無言だったけど、何かを言いたげな感じでモジモジしている。これは、待つべきかな?
「…………………………」
でもモジモジが続いたままで、助け船を出した方がいいみたいだ。だけど急かすのも駄目っぽいし、ここは適当に会話を繋げてみよう。
「そういえば、小桜さんも読書好きでしたよね? お薦めの本ってありますか?」
「っ!! ……………っ」
あれ? 何でビックリ顔? どうやら乙女心は複雑で、俺にはまだ理解できない物とショボーンとしていたら、
「…………………………よければ、本、……貸すよ?」
という照れながらの主張を快く同意して、明日はお互いお薦めの本を貸し合う事になりました。
集金云々はネタですので




