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小桜さんは義理堅い  作者: 奈瀬 朋樹
はじまり
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プロローグ

 死ぬ程勉強して志望校に見事合格。

 そして今日は待ちわびた高校入学式なのに、何で病院のベッドで寝てるのだろう。


 理由は勿論あるし、俺に落ち度がない事を説明させてほしい。受験勉強漬けの日々から解放された春休み。別れる中学友達とも遊び尽くし、その日は朝からずーーーっとダラダラしていたら、母親から「暇なら買い物に行け」と愚痴られ、渋々スーパーに行った帰りに、車に跳ね飛ばされたのだ。


 先に言っておくが、信号無視じゃない。横断歩道の信号は青を示し、俺以外にも歩行者はいた。なのに車がノーブレーキで突っ込んできた訳で、どないせいっちゅうねん。


 因みにこういう時、時の流れがスローモーションにって話があるけど、あれは本当だった。そして本来なら、車を避けられた筈だ。「お前跳ね飛ばされたのに何言ってんの? 変な意地を張るな」と生易しい目で慰められそうだが、急接近する車に気付いた瞬間、即座にサイドステップをすれば無傷で済んだと、今でも思っている。


 でも、それはできなかった。

 すぐ横に、小さな女の子が歩いていたからだ。


 この子との面識はなく、信号待ちで偶々居合わせただけの存在で、瞬く間に迫ってくる鉄の塊と、それに全く気付かずに歩いている少女がセットで瞳に映った瞬間、思考を巡らせるよりも早く、スーパーで買った食材を投げ捨てて、その子を庇ったのだ。



 その結果が左足骨折という、全治一ヶ月の大怪我である。



 少女を助けるべく駆け寄った途端、左半身に激痛が走り、咄嗟に抱きしめて、そのままフロント・ルーフ・リアガラスという順序で車の上をゴロゴロと乱雑に回転してからアスファルトに放り出されるという、アクション映画のスタントマンですら血反吐を吐きそうな芸当をやってのけたのだ。


 それから抱きしめた少女が泣きだし、怪我がなさそうなのが分かってから、意識が途切れた。


 後悔はなかった。もし自分の安全を最優先にして車を避けたら、間違いなく車が少女に直撃して、死んでいたかもしれない。そうなったら『助けられた女の子を見殺しにした』という、一生モノのトラウマを背負っていただろう。それがどれ程の重荷かは分からないし、分かりたくもない。だから、これで良かったんだ。


 そんな感じで事切れたけど、幸いにも俺は生き延びた。


 意識を取り戻した時、傍にいた両親に「ごめん。買い物ミスった」とお道化たら頭をはたかれたけど、親不孝にならなくて何よりだ。


 だけど怪我は予想以上に酷く、激突したバンパーが左足をへし折り、腰も重度の打ち身、頭も強打したので精密検査、全身擦り傷だらけという有様だ。だけど腰骨が無事だったのは不幸中の幸いで、もし折れていたら入院3ヶ月コースで全治はそれ以上、後遺症の可能性有という大惨事だったらしい。


 なので今はベッドから全く動けず、更には医者おっさんから「オムツとおまる、どっちがいい?」と迫られる等、不自由極まりない生活を強いられる事態となり、とりあえず受験で封印した読み終わってない小説でひたすら時間を潰していたら、1人のお見舞いが来てくれたのだ。


 今日入学する筈だった高校の制服を着た、1人の女の子が。

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― 新着の感想 ―
[一言] なろう分析で、似た作品として紹介されたのでお邪魔しました。 言われてみれば私が書いたのか?と思う言い回しやルビ使いが。 続き読みますね
2023/03/26 07:35 退会済み
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