第8話・曽祖父のたまごかけごはん ②
私用で投稿遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
次の日の朝、私はそのひいじいちゃんの親友の息子の方がいるというところへ向かった。
私が住んでいる61階層を少しあがった72階層のはずれに住んでいるらしい。
お父さんの地図を頼りに、72階層を数十分うろうろしたあと、私は目的地に着いた。
「ごめんくださーい。ナツオのひ孫のアスカと申します。私の父親の紹介でこちらにきました。ユーゴさんはいらっしゃりませんでしょうかー?」
ノックをして、私はそう名乗りを上げた。
ちなみに、ナツオはひいじいちゃんの名前である。
「ナツオさんのひ孫の方か…。どうしたんじゃ?」
カチャンと音がして、中から70歳くらいの老人がでてきた。彼がユーゴさんだろう。
「ひいじい……、曽祖父が末期ガンにかかってしまい、余命半年と宣告されたんですが、その時に不思議なことを言っていて…。ユーゴさんなら知っているかもしれないと父親が言っていたので今日は訪ねさせていただきました。」
一瞬、驚いたような目をしたユーゴさんは、すぐにもとの柔和な表情に戻り、私を迎え入れてくれた。
「あいつ…あぁ、君の父親とは昔一緒にはたらいた場所の上司と部下の関係でのう。それで知り合ったんじゃ。もともと人数が少ない職場じゃったから、立場の差を気にせず皆と仲良くなったんじゃ。君の父親とはお互いのことを話すうちに、自分たちの祖父同士が親友だったってことがわかってなあ。驚いたもんじゃよ。」
私のお茶を入れてくれながら、ユーゴさんはそう話した。私はそんなユーゴさんに事情を説明した。
「なるほどなぁ…。それは気になるわい。…ちょっと待っててくれんか。祖父の遺したものを少しあらためてみるからのう。」
そう言うと、ユーゴさんは一旦奥へと下がった。
幾分かして、ユーゴさんは古ぼけた手帳を一つ持ってきてくれた。
「これは祖父がいつも日記として使っていた手帳じゃ。これにもしかしたら書いてあるかもしれん。」
そう言って渡してくれた焦茶色の革の手帳は、ユーゴさんの祖父が亡くなって数年経ったらしいいまでも、ぴかぴかに磨き抜かれていた。
ユーゴさんの人柄がうかがえる。
私は中を丁寧に開いて読んでみた。
〈11月11日〉
今日は、ナツオの誕生日だった。ナツオは1続きのこの誕生日が気に入っているらしく、毎年皆から棒状の食べ物や道具をもらって喜んでいた。今年のナツオの誕生日には、俺は箸をプレゼントしてやった。ナツオは食い意地がはってるからな。
私は、当時からひいじいちゃんはひいじいちゃんだったんだと心の中でニッコリと笑った。
続けて別のページを読んでみる。
〈3月25日〉
今日はナツオの結婚式&☆た。俺も当¥参加した。式は☆¥%○*€#で、@%¥○☆だった。
@#☆%$+々〆、¥%・○!
ナツオ、ウス$ヨシエさん、ああ、@☆は#/♪¥か。結婚おめ#とう!
読めないところが多すぎる。
「祖父は酒を飲むのが好きだったんじゃが、とことん酒に弱くてのう。気力でここまで書いたっぽいがおそらく限界がきたんじゃな。」
横で一緒に見ていたユーゴさんは、そう言って笑う。さらに別のページを開く。
〈6月7日〉
今日、ナツオとあったとき、やつはひどく暗い顔をしていた。なんでも、戦争への出征が決まったらしい。ただ、すぐに力強い顔に戻って、奥さんと大好物のTKGとやらを食べたから大丈夫、生きて戻ってきてまた一緒にTKGを食べようと言われたんだから、必ず生きて戻るさ。
そう言う風に言って、豪快にナツオは笑った。
これだ…。ひいじいちゃんはまったくひいばあちゃんのことを話そうとはしなかったが、確かひいじいちゃんの奥さん、つまりひいばあちゃんとは結婚してすぐに戦争で離れ離れになってしまい、奇跡的にひいじいちゃんは生きて戻ってきたが、その時にはもうひいばあちゃんは他国からの侵攻で亡くなってしまったらしいと以前お父さんから聞いたことがある。
こんなつらいことがあったなんて…。
私は、ひいじいちゃんの思いをようやく理解した。
たまごかけごはんは、ひいじいちゃんにとって単なる好物なだけではない。
奥さんとの思い出の料理だったんだ。
感想、ポイントなど、よろしくお願いします!