第7話・曽祖父のたまごかけごはん ①
新編スタートです!
「TKG。それは、最っっ高の料理じゃ。」
今年で108歳になる私のひいじいちゃん。
そんなひいじいちゃんが、私が物心ついた時から常々言っていたのが、この言葉だ。
残念ながら、私、アスカは「T」も「G」もこの目で見たことは一度もない。
どうやら、ひいじいちゃんはバベルができる前にそのたまごかけごはんとやらを食べたことがあるらしい。
私の両親は、毎回その言葉を笑って聞き流していたけど、私は妙にその料理が気になった。
ひいじいちゃんに色々聞いて、
・たまごは、人でも虫でもない羽を持った動物(『図書館』の絵本で見たことがあるが、「ニワトリ」というらしい)が、赤ちゃんの代わりに産むもので、かつて人間はそれを食していた。
・ごはんは、正式には「コメ」というらしく、現在の主食である雑穀バーに含まれている雑穀も似たようなものだが、コメの方が数段美味しく、水を吸収させることで食べることができる。
ということがわかった。『学校』の友達にも「TKG」のことを伝えたが、あまり興味はわかなかったようだ。でも、私はそれをいつか食べてみたいと思っていた。
そんなひいじいちゃんだが、昨年末からあまり体の状態が芳しくない。108歳とここまで長生きしてきたが、どうもやはり体の機能にガタがきているらしい。
そこで今日は病院に私、私の両親、ひいじいちゃんで一緒に検査にきたのだ。
待合室にひいじいちゃんを残して、私と私の両親は検査結果を医師に聞いた。
「残念ながら、おじいさんは末期ガンに患われています。余命はあと半年程度でしょう。」
そう言葉を聞いて、私たちは言葉を失った。まさかあのひいじいちゃんがこんな1番起きて欲しくないテンプレにひっかかるなんて。
たしかにひいじいちゃんは、周りと比べてかなりの長生きだったことは間違いない。しかし、ちょっと具合が悪いだけで、まだまだピンピンしてくれると思っていた。
ガンは、第三次世界大戦以前には特効薬が見つかっており、治る病気だったらしい。
しかし、戦争で全てが荒廃し、バベルという閉鎖空間ではとてもどうしようもできなくなってしまったらしい。
医師の言葉は、私の心に重たく響いた。
両親は話し合った結果、ひいじいちゃんに事実を話すことにした。無言で両親の話を聞くひいじいちゃん。聞き終えると、ひいじいちゃんは、
「ガンかあ。それならしょうがないわい。」
そう言って咳き込みながら苦しそうに笑った。
私は、そう言うひいじいちゃんを見るのはとても辛かったので、目を逸らしてしまった。
先に帰ると言って行った両親を見送り、私はひいじいちゃんの病室となった部屋に残った。
ひいじいちゃんと一緒に過ごしたい気分であったからである。無言でベッドの脇の椅子に座る。
数十分経ったころであろうか。
私ははっと目覚めた。どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
ふと、ひいじいちゃんの方を見ると、ひいじいちゃんも眠っていた。
何か寝言を言っている。
「TKGは最っっ高の、“思い出”料理じゃ…もう一回でいいから食べたかったのう…むにゃむにゃ…」
いつも聞いていたはずの言葉に、聞いたことのない単語が付いていた。
思い出?思い出ってどういうこと?
私は疑問に思い、家に帰って、両親に聞いてみることにした。
「う〜ん、じいさんがそんなことを…。何かたまごかけごはんに思い入れでもあったのだろうか…。」
「私もそんなこと聞いたことないわ。」
両親も知らないらしい。困った私に、お父さんは思い出したように言葉を発した。
「あっ。そういえばじいさんの親友だったやつの息子のことを知ってるぞ。何か知っているかもしれない。場所を教えるから、訪ねてみればどうだ?」
それはいい案だ。お父さんからその親友の息子の所在地を聞いた私は、翌日向かってみることにした。
待っててね、ひいじいちゃん。死んじゃう前に心残りなんてつくらせないんだから。
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