第5話・キンモクセイの木の前で 中編
短めですが、キリ良くしたかったのでご容赦ください!
土曜日。
ウィンディは、手始めに46階層、通称『図書館』へ向かった。
ここは、戦争を生き残った書物たちが集められており、平民層以上なら2B$を払えば、誰もが利用できる。
ちなみにB$は、このバベルにおいて使われている共通通貨であり、これによって売買が成り立っている。
『図書館』で目的の書物を見つけたウィンディは、一心不乱にそれを読んだ。そして、必要なことを頭の中に詰め込んでいく。
日曜日。
ウィンディは、65階層、通称『植物園』に向かった。
聞くところによると、ここは、バベル創始期の住人の1人だった植物学者が、植物の絶滅を可能な限り減らすために、所持していた植物の種を全て植え、それが発達して今の状態になったらしい。その植物学者の孫が、現在この『植物園』の管理人を務めている。
その管理人に許可をとり、ウィンディはとあるものを集めにいった。
去っていくウィンディの後ろ姿を見つつ、管理人はポツリと呟いた。
「バベルの中で、こんなあたたかなものを見れるとはな…。」
月曜日。
ウィンディは、1階層、『処理場』に向かった。
ここに集められた不要なものたちの中を、ウィンディはひたすら探す。原料となるものが貴重となった現在、一介の民であるウィンディには、材料を買うほど資金面に余裕はなかった。
目的の物を見つけると、ウィンディはそれを持って、37階層へと戻っていった。
火曜日。
ウィンディは、製作を始める。細かい作業が苦手な彼にとって、製作は至難の連続であった。
水曜日。
試作第1号が出来上がる。
しかし、その見栄えは余りにも不恰好であった。
「これじゃあダメだ…。もっと上手く、もっと上手くしないと…。あと1日か…。急がないと。」
そう1人呟くと、ウィンディは再び製作に戻っっていった。
木曜日。
ウィンディは、かなり慣れて来た手つきで製作を続ける。何度も失敗するうちに、上達してきたようだ。
そして、遂に出来上がりを迎える。完成して、ウィンディは一つ息をつくと、大事そうにそれを袋に入れた。
その夜。
ウィンディはベッドの上に寝転がるが、眠気はまったく起きなかった。眠気がないのに身を任せ、考え事を始める。
(もしこれで喜んでくれなかったら…。断られたら…。)
ついつい弱気な思いが頭をもたげる。
(でも、ここまでやったんだから、僕は後悔は絶対にしない。必ず…必ずヤエに僕の思いを伝えてみせる!)
弱気になりがちな自分を鼓舞するかのように、ウィンディは、ベッドの上で手をグッと強く握った。強く。強く。痛いくらいに。
そして、運命の日を迎える。
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