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バベルのこどもたち   作者: 苫夜
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最終話・DREAMS COME TRUE!

最終話です。


98階層、『政府』の「会議の間」。


そこに、多くの小さな影が向かっていた_____




---------------------




「それで、そんなに大勢で今日は何のようだね?」


前より幾分か柔らかくなった気がしないでもない口調で、バベル総階層管理者(マスター)のアルテン・ヨードルジャフがそう問う。

その脇には、いつものようにスタイル抜群の女性が控えている。


彼の見据える先の集団の先頭には、あの声を失った生徒会長ベリーズがいた。


彼女の後ろにいた1人の少年が口火を切る。


「….私のことを覚えていますか、バベル総階層管理者(マスター)。かつて、あなたにあの地下1階層の『獄』に入れられたトバリです。ここにいるみなさんに助けられて、今日ここに来ることができました。」


アルテン・ヨードルジャフが目を少し細める。


「どうやってあそこからでたのだ?」


その質問にはこの場にいる数少ない大人の中の1人である、45階層『学術街』で「堕ちた天才」と呼ばれていたあの女博士が答える。


「私が助けたのよ。彼が捕まった当初は、私も何もすることができなかった。でも、夫が残してくれた研究所のおかげで、ようやく研究が実を結んでくれたの。この女の子も協力してくれたわ。」


そういって平坦な胸をはるリエル博士。


「そうよ。私と仲間がたまたま探検したところが、彼女の夫の秘密の研究所に繋がっていてね。正確に言えば、私じゃなくて、私の写真を見た私の母親の協力なんだけどね。」


「この子の母親とは昔からライバル関係でね….。影を抱えていた私を叱咤激励するとともに一緒に研究を手伝ってくれたわ。その結晶がこの転移黒曜体よ。」


探検隊のメンバー、サヤカの謙遜に続いて、リエル博士はそう言って黒いキューブを高く掲げる。


「なるほど….。あの100階層に入ったこどもも、その少年がでれたのもそれのおかげということか….。」


穏やかにそう語るバベル総階層管理者(マスター)に、その100階層に行った少年が反応する。


「ぼくのときはまだ、かんせいけいじゃなかったんだけどね。りえるはかせがいっしょうけんめいにけんきゅうしたんだ!」


そう言って誇らしげに鼻をこするナギサ。


「….しかし、よくこうも身分が違う者がここまで集まることができたな….。身分差分別法が廃止になったとはいえ、そう簡単には動けなかっただろうに。」


そういってふっと息を吐くアルテン・ヨードルジャフ。


「まあ身分差分別法にはほんと私たちは困らされちゃったわ、ねぇ、ウェンディ。」


「本当だね。でもいまこうやって2人でいれるからとても僕は幸せだよ、ヤエ。」


キンモクセイの香りを纏いながら、衆前で惚気る2人。


その横で、もう1人の大人がバベル総階層管理者(マスター)の疑問に答える。


「あの「外の空気」侵入事件のあと、俺は32階層の『軍隊』のトップに就任したんです。あいつの夢を追いかける姿は、ここにいるこどもたちと重なって見えましたから、おれが方々に働きかけて、こいつらに協力してやったんです。」


慣れない敬語を使いながら、そう言って赤いヒーローフィギュアをぐっと胸の前に差し出すベルダンディ。


その脇には、米がはいったお守り袋をぎゅっと握りしめるアスカや、大事そうにボロボロの『古今和歌集』を抱きかかえるホズミの姿もある。


おもむろに、アルテン・ヨードルジャフが立ち上がって、こどもたちの方に背を向けて話し出す。


「それで、お前らは何がしたくて今日ここに来たんだ?何か目的はあるんだろう?」


〈それよりも1つ疑問があります。〉


質問に答えずに、逆に背を向けたアルテン・ヨードルジャフの方に回り込み、紙に書かれた言葉を見せる。


「….なんだね?」


〈どうしてあなたは私たちを今日ここにいれたんですか?しかも、『軍隊』の護衛も見たところいないようです。あなたは何がしたかったんですか?〉


「それは….。」


〈それは、私たちが復讐に来たと思い、それを甘んじて受け入れようと考えたらではないんですか?〉


そばに控えていたスタイル抜群の女性が驚きに目を見開く。


「….あぁ、私はお前ら….、いや君たちに謝っても謝りきれないほどのことをしたと思っている。罰を受けて当然だ。」


「やっぱりあの時に気持ちが変わったのね….。」


豊かな肢体をくねらせてその女性が呟く。


〈私たちは、みんな、あなたをどうにかしようとは思ってなんていません。〉


その時、ずっと差し出されたその文章を見て、アルテン・ヨードルジャフも驚きに目を見開く。

周りを見渡すと、こどもたちは全員穏やかな笑みを浮かべていた。


〈1つだけお願いをしにきたんです。〉


震える声でアルテン・ヨードルジャフが答える。


「….お願いとはなんだ?」


「「「「「「〈こどもたちに夢を自由に持たせてあげてください!!!〉」」」」」」


その問い返しに、その場にいたこどもたちは皆大きな声でそう答える。



しばし沈黙が流れる。






「….いいに決まってるじゃないか。」


そういうと、ついに耐えきれなくなりアルテン・ヨードルジャフは滂沱の涙を流し、嗚咽を始めた。




---------------------




バベル。


そこは、地球の汚染に負けず、人々が力強く暮らす場所。




















そして、多くの夢が輝く場所。




今まで読んでいただきありがとうございました!

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