第39話・ある階層記録作家の記録 後編
かなり短めです。
《50階層》
こどもたちが多く集まるここ、『学校』。
小さなものから大きなものまで、ここには夢がいっぱい詰まっていた。
階層行き来の自由を求める生徒会長。
自らのアイデンティティに悩む少年。
日々の他愛もない勝負に全力の2人の生徒。
曽祖父のためにバベルを走り回った少女。
そのどれもが輝いて私には聞こえた。
自分の益にならないはずなのに、バベルにいるこどもたちのためにバベルの実力者に抗った生徒会長。
声を失った今も、その情熱は衰えていない。
「今度もう一回、あのバベル総階層管理者のところに行こうと思います。私が知る限りの、今まで夢を叶えたこども、残念ながら叶えられなかったこどもを一緒に連れて。叶ったか叶わなかったかは関係ないんです。大事なのは、各々が夢に向かって努力をしたってことだと思うです。」
彼女は真剣な表情でそう語る。
「難しいってことはわかってます。でも、どうしても諦め切れなくて。」
あぁ。
私は瞠目した。
そうか。そういうことなのか。
長い間このバベルを回ってきて、ようやくこどもたちがどのように生きているのかわかった気がした。
それは夢に向かう努力である。
みんな、みんな、誰しもが決して夢を諦めたり、投げ出したりはしなかったのだ。
夢とは土でもあり、種でもあり、芽でもあり、葉でもあり、茎でもあり、花でもあり、実でもある。
夢がこどもたちの生きる道を切り拓く。
夢がこどもたちの生きる道を色付ける。
夢がこどもたちの生きる道を紐解く。
夢がこどもたちの生きる道を照らす。
夢がこどもたちの生きる道を耕す。
夢がこどもたちの生きる道を潤す。
夢がこどもたちの生きる道に笑いを与える。
夢がこどもたちの生きる道に元気を与える。
夢がこどもたちの生きる道に涙を与える。
夢がこどもたちの生きる道に勇気を与える。
夢がこどもたちの生きる道に感動を与える。
夢がこどもたちの生きる道に希望を与える。
夢はこどもたちに絶望を与えない。
夢はこどもたちに悲哀を与えない。
夢はこどもたちに怠惰を与えない。
夢はこどもたちに堕落を与えない。
夢はこどもたちに諦念を与えない。
夢はこどもたちに嫌悪を与えない。
夢がこどもたちを輝かせる。
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