第36話・ミラクル☆オレンジ 後編
「ミラクル☆オレンジ」編完結です。
階層照明に照らされて、キラキラと輝くキューベルの秘密基地、もとい『輝きの丘』。
そこからどうしてか、ひょろっと1メートルくらいの植物が伸びている。
おそらくここの環境のせいだろうか、異常な成長速度でキューベルが隠したオレンジの種から目は伸び、ここまでになったのだ。
「なにこれ!すごい!すごい!かたいなにかから、しょくぶつがはえてきた!!」
キューベルは興奮しきりだった。
「これ、もっとそのままにしといたらどうなるのかなあ!フフフ、楽しみだなあ♩」
そうして、キューベルはその生えてきた植物をそのままにしておくことに決めた。
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ねぇ、知ってる?
3階層に、とても大きな木が生えてるってこと。
いやいや、嘘じゃないよ。
『植物園』にも負けないくらいの立派な木が本当に生えてるの。
『輝きの丘』っていうところなんだけどね。
そこら一帯は昔からバベルの壁が脆くてね。みんな困っていたの。
でも、その木がそんな状況を変えてくれたの。
とてつもない勢いで成長したその木はね、3階層の天井いっぱいに枝を広げ、そして壁を覆ったの。
良かったのはそれだけじゃないわ。
その木はね、次第に実を実らせはじめたの。
見た目はオレンジ。だけど、やけに不思議に輝いてる。それを食べたこどもたちは、なぜか体の不調がみんな治ってしまったの。大人は食べてもなにも起こらなかったけどね。
だから、本当だって。あなたも一度は口にしたことがあるんじゃない?「輝きのオレンジ」っていう不思議な名前の子供用お薬よ。
でしょ?それがこの木からとれたオレンジをもとに作られたお薬よ。
まだ信じられないの?….そんなうまい話がこのバベルであるわけがない?
まあ確かにそう思うのも無理はないわ。私もはじめは信じることができなかったしね。
じゃあもう少し深いところを話してあげるわ。
その木をはじめに見つけたのは、とある少女。
というか、その少女がオレンジの種を『輝きの丘』に隠したの。
そしたらどんどん芽がでて、どんどん大きくなりはじめた。
木が大きくなるにつれて、3階層で議論がまきおこったの。
それは、「この木をそのままにするか、切ってしまうか」っていう問題。
切る派としては、成長速度から見てもこの木は異常だから、いつかバベルの害となる前に切ったほうがいいっていう主張だったわ。
逆に、維持派としては、ただでさえ普段から苦しい生活の4階層の希望の光となるという主張だったわ。
正直どちらも感情論だから、一向に議論は平行線だったの。
これが一気に進展したのは、この木をはじめに見つけた少女の行動のおかけだわ。
彼女は、純粋に、この木とともに歩むことを願っていた。しかし、それだけでは通じないことがわかると、当時は危ないものとされていたそこになるオレンジを自らかぶりついた。
小さい少女が、ただ純粋な願いを叶えるために、命を厭わない。
結局、食べた少女は特に体に異変は起こらず、むしろ体調が良くなったっていうのを聞いて、賛成に回る人が増えたの。
そして、バベルの医師がこのオレンジの効能を発見して、今に至るの。
どう?これで信じてくれるかしら?
え?なんでそんな詳しく知ってるかって?
その少女は、私、キューベルのことだからよ。
さあ、あなたもこの奇跡のミラクルオレンジを食べてみて!
残り4話です。
最後までよろしくお願いします。
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