第31話・僕らは財宝探検隊 ⑥
「僕らは財宝探検隊」編完結です!
一つの謎がここで解けると思います。
どれくらい走ったのだろうか。
気づくと、4人は元の草原にいた。
「ふぅ、ふぅ……。ここまでくればもう大丈夫かな……。」
息も絶え絶えにカンタが言う。
「……でも、サヤカの以外、私たちの荷物置いて来ちゃいましたね……。」
「命が助かるだけ良いと思った方がいいんじゃない?昔あった国で、''ぬちどぅたから"っていう、命が一番の宝物だっていう言葉があったくらいだしね。」
リーンの言葉に、苦笑しながらサヤカが答える。
「もう今日は疲れたぁ!」
そう言って草原に寝転ぶジョー。
他の3人もそれにならう。
「フッフッフッ、ハッハッハ!!」
突然、泥だらけの顔をくしゃくしゃにしてカンタが笑い始める。
「いやあ、楽しい冒険だった!!」
「ほんとにそうね。フフフ。」
サヤカもクスクスと笑う。
「……もう今はなにもしたくありませんけどね……。」
そういうリーンの顔も、どこか満足そうだ。
「母ちゃんにどうやってこの汚れを説明しよう……。」
結局最後は3人につられるままに走って来たジョーが口元を緩めながら不満を言う。
やがて、サヤカも大きな声で笑い始め、それにつられてジョーも、リーンも大きな声で笑い始める。
ひとしきりみんなで笑う。
「みんな!」
と、突然カンタが叫ぶ。
「今回は結局お宝を見つけることはできなかったけど!!!」
その先を察した4人は笑いながらカンタと一緒に叫ぶ。
「「「「また冒険しよう!!!」」」」
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それから数日。
サヤカは、『学術街』から帰って来た母親に、気になることがあったので、母親にそれとなく聞く。
あの日の夜のことは、4人の間の秘密になっていたので、詳細は語らないようにする。
もう一度サヤカは1人でその入口に行ってみたが、もうそこには何もなかった。
「お母さん。ロベールって知ってる?」
「ロベール?あぁ、あの"元祖最高の科学者"ね。それがどうしたの?」
気になる称号ではあったが、ひとまずサヤカはその話を置いておく。
「いや……。ある人からその人の話を聞いて……。そのローベルって人は何を研究してたの?その人は何か黒い結晶みたいなのって言ってたんだけど……。」
あの日、鎧が降りてくる前、サヤカが光の先にごくわずかに見たのは、その黒い結晶であった。
「………!!わからないわ。彼の研究は謎な部分が多くてね……。」
一瞬はっとしたような表情を見せたが、サヤカの母親はすぐに元の表情に戻った。
「そう。」
サヤカは母親が何か知っていると気づいたが、そう言うと踵を返した。
この状態の母は、何も答えないことを知っているからだ。
サヤカは自室に戻り、机に向かって勉強を始めた。
その脇には、あの日持っていったカバンが置かれていた。
ハラリ。
開けていた窓から吹く風で、はみ出ていた紙がカバンから舞い落ちる。
それは、あの屋敷にあった家族写真であった。
どうやらサヤカがそのまま持って来てしまっていたらしい。
微笑む元主人ロベールとその家族。
そのロベールの顔は、あの階層記録作家の顔にそっくりであることに、無論サヤカは気づくことはなかった。
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