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バベルのこどもたち   作者: 苫夜
24/40

第24話・アイデンティティをその胸に 前編

新編、「アイデンティティをその胸に」編です!

よろしくお願いします!


僕の名前はタロウ。15歳。

平民層の63階層に住んでいる。

身長、体重は一般的なレベル。

勉強は可もなく不可もなく。


まあ容姿は中の上だとは自分では思ってる。

なのに彼女はできたことはないけど。


一言で僕を表すなら、普通。その言葉に尽きると思う。


いわゆるモブキャラってやつ。





……そんな状況、実際僕は満足なんかしていない。当然だよね。



どこか一つでもいいから、みんなより尖ったところを持ちたい。

自分だけのアイデンティティを手に入れたい。


それが、僕の密かな夢だった。




---------------------




「3.141592……」


『学校』からの帰り道、今日も僕は円周率を唱える練習をする。

円周率を覚えてる人なんて殆どいない。

理由はそんなものだ。


「ねぇ。ねぇタロウってば!!話聞いてるの!?」


後ろから小走りで僕の方に向かってきた女の子がプリプリ怒る。


茶色い髪をポニーテールに纏めた、気の強そうな女の子だ。名前を、ローザという。


「さっきから何回も呼んだのに、さっさといつちゃうんだからもう!!」


ローザは、いわゆる僕の幼馴染だ。何かとこんな風に絡んできて、勝手に話を進め始める。

まあでも仲が悪いわけじゃないし、家の階層も同じだから、よく一緒に帰ってるんだけどね。


「ごめん、ちょっと考え事してて気づかなかった。別にローザは無理して僕と帰ろうとしなくてもいいよ?大変そうだし。」


ローザにも、僕の夢のことは秘密にしている。周りに知られたら、恥ずかしいからだ。


「んなっ、な、なによ!別に一緒に帰るくらい私の勝手でしょ!!もう!自分勝手なんだから。」


そう言いつつ何故か頬を染めているローザ。

なんでだろう?


「…ところで、タロウは『階層展』になに出すか決めた?私はまだなににしようか悩んでるところで…。」


「うーん…、僕もまだなににするか決めてないんだ。」


『階層展』とは、1年に1回、『学校』で行われる、美術、文芸、パフォーマンスなどなんでもありのバベルの展覧会のようなものだ。

『学校』に通っている生徒は、必ず一つなにかそこに出展しなくてはならない。

このイベントは、バベルの中ではかなり規模が大きいらしく、昨年は多くの人で賑わい、最終日にはあのバベル総階層管理者(バベルマスター)もきたらしい。

ちなみに昨年の出展物は、僕が彫刻、ローザは生け花であった。


「去年の彫刻はあんまりみんなの受けが良くなかったからなあ。どうしよう。」


「私も生け花をまたは嫌だわ…。」


今言った理由で、今年も彫刻をやる訳にはいかないのだ。同様の理由で、ローザもあまり生け花をやりたくはない。

…僕の理由には、"尖る"見込みがなかったっていうのもあるけどね。


「リストの提出期限は明日までだから、早く決めないといけないわね…。」


「家に帰ったらもう一回何かないか考えてみるよ。」


「それがいいわね。」


そう結論に至った僕たちは、家の近辺に来ていたので別れ、それぞれの家へと戻っていった。




---------------------




「うーーーん…。」


その夜。僕は、たくさんのアイデアが書かれた白い紙の前で唸っていた。

どれもこれもしっくりこない。

ありきたりすぎるんだよね…。


悩み疲れた僕は、ベッドの上に寝転がる。


クー。クー。

どこかで鳥が鳴いている。

あれ?この鳴き声は、確かカモメっていう鳥のものだよね?でもバベルにはカモメなんていないはずなのに。図鑑には絶滅してしまったと書かれていたし。

クー。クー。

またカモメが鳴く。

キラキラとした太陽が眩しい。

そしてその下には________



「はっ!」


と、そこで僕は目を覚ました。どうやら知らぬ間に寝てしまっていたらしい。

やけに具体的な夢を見ていた気がするけど…。


首をぐるぐる回して体も目覚めさせ、僕はアイデア探しを再開する。

すると、先ほど見た夢のことが何故か思い浮かぶ。

そういえば、あの夢って昔どこかで見たような…。

僕は、引き出しの中を引っ掻き回し始めた。


数分後、目的のものを僕は見つける。


それは、お母さんからかなり貴重なものとして大切に保管しといてねと言われていた、しわくちゃの古い紙だった。


それをじっと見つめる。


そして、アイデアを僕は思いついた。


しかし、それが僕のアイデンティティになりうるのかどうか悩む。


しかし、他にいいアイデアは思い浮かばず、結局僕は思いついたアイデアにすることにした。











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