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第8話 I高校のお嬢様 その1

〜4月18日〜

隆と美伽が男と戦って6日が経った。特に何も起こらなかった。


この日の昼の高校は騒々しかった。理由は簡単この学校の2年生で、この高校で1番の美女で、1番の金持ちで、1番モテる完璧美女の森山モリヤマ 杏奈アンナが廊下を歩いていたからだ。と言っても、毎日彼女が廊下を歩くと、校内の男子と女子が騒ぐので、今日に限っての話ではないのだが。

「やっぱり私は美しいわよね」

「「「「はい!!杏奈様!!!」」」」

「うんうんよろしいよろしい。ハハハハハ!!」

隆はその様子を遠目で見て

(完全にお嬢様だな)

と思った。そして中庭のベンチに座り、テーブルにサンドイッチを置くと、袋を破って食べた。すると杏奈が隆の方へ向かって歩いてきた。周りが騒ついた。

「何だ?あいつ。杏奈様を見ても何にも思わないのか?」

「1年だから知らねえんじゃねぇの?」

「いや。俺1年なんスけど、杏奈様のように綺麗な人を見たら、普通心を奪われてしまいますぜ」

隆は目を上げて、杏奈と目を合わせた。

「何だ?」

「あなた。私を見ても何も思わないの?」

「はぁ?別に何も」

「へぇ」

すると隆の向かいの椅子に座り

「分かったわ。あなた女の人より、男の人が好きという、確か・・・ホモ!そう!ホモでしょ?じゃないと男子が私を見て何とも思わないはずないものね」

「違えよ」

すると後ろから女子が1人走ってきた。

「隆君!!!遅れてもごめん!!売店並んでてさ」

「分かったから。早く座れ」

隆が少し横に移動した。すると美伽が座った。

「あれ?この人は?」

「さぁな。あそこにいる皆は杏奈様とか言ってたぞ」

「初めまして杏奈さん。私は雨音 美伽。横の男子は睦月 隆。よろしくお願いします」

また周りが騒めき始めた。

「隆彼女が居たのか?」

「確か噂だと、隆って兄がいて、その兄が能力者らしいぜ」

「マジかよ。というか確かにあの美伽とかいう女子も可愛いが、杏奈様と比べると完全に杏奈様だろ」

「というかあの女子も女子よね。どうして杏奈様を見て、何とも思わないのかしら」

隆が周りを見渡した。

「ったくなんなんだよ」

すると杏奈が立ち上がり

「あらそう。分かったわ。あなた達の名前覚えておくからね。睦月さんと美伽?で良いのよね」

(私だけ呼び捨て・・・)「あっはい」

「また今度ね」

「おい。あの杏奈様がさん付けだぞ!」

「羨ましいー!!俺にもさん付けしてくれ!!」

「というか名前を覚えてもらえるって事が凄いぞ!!」

五月蝿かった。隆も立ち上がって

「うるせぇな。これじゃあ昼飯が食えねぇ。教室に戻るぞ」

「え!ちょっと待って!!」

美伽と隆は教室に戻って行った。杏奈はそんな2人の姿を見て、親指の爪を無意識に齧り出した。

「くっ。何なのあの2人。私を見ても何も思わないとか・・・。そして何?この感情。睦月さんを見た瞬間に出てきたこの初めての感情」

杏奈は後ろを振り向き、教室へ向かって歩いて行っている睦月を見た。

「睦月 隆・・・」


〜1年 3組〜

「ん?あんた達中庭で食べるんじゃなかったの?」

「そのつもりだったが、五月蝿くて戻ってきた」

「教室の方がやっぱり落ち着くしね」

「ふぅん」

2人は夏子の机に昼食を置いて椅子を持ってきて座った。

「って私の机で食べる意味ある?」

「良いじゃないの。だって夏子昼食トッポしか食べないから、机何も置いていないじゃない。置かせてよ。皆で食べた方が楽しいでしょ?」

ニコニコしながら、弁当を出した。

「お前ら呑気で良いよな。いつ刺客が来てもおかしくねぇってのに」

「学校にまでは来ないでしょ。沢山の人前で能力使ったら、自分が不利になるだけだし」

美伽の言う通りだった。もしこんな所で能力を使う奴が居たら、単なる馬鹿だ。もし自分が能力者と分かったら、社会的に一気に不利になる。

「とにかく油断はすんなよ」

サンドイッチを出すと、中のレタスが大きいような気がした。

「ん?こんなにレタスって大きかったか?」

「さぁね。サンドイッチの種類によって違うんじゃないの?」

「それにしても食べにくそうね」

「あぁ」

レタスを千切って食べた。

「まぁ味は普通だな」

「じゃあ大丈夫でしょ」

夏子がそう言った。次美伽が弁当を開けると、中の野菜類が腐っていた。

「え?」

「お前いつから腐っているもんを食うようになった」

「食べないわよ!!可笑しいな。昨日お母さんが買って来てくれたばかりの野菜なのに」

「そうだ。睦月君のそのレタスあげたら?」

「あぁそうだな」

ほらよ、と言って美伽の弁当にレタスを入れた。


〜廊下〜

杏奈はマスクとサングラスをかけて、外からドアの窓を覗き、隆達を見ていた。

「気に入ってくれたかしらね」

杏奈はヒヒヒと悪い笑いをした。すると後ろから人の気配がした。そして肩をトントンと叩かれた。杏奈が振り向き「何?」と言った。そこに居たのは、生徒に扮装していた執事だった。

「お嬢様何をしておられ」

「シー!!シー!!今は普通な生徒を装っているんだから、お嬢様と呼ばないで!!!」

「見た目からして普通の生徒ではないのですが。なんですかマスクにサングラスって。怪しさ満載ですよ」

「うっ!!うるさいわね!!」

執事が教室を覗くと

「また能力を悪用していたんですか?」

と杏奈に聞いた。

「別に?ただあの睦月さんという人に、ちょっとしたプレゼントをしてあげただけよ」

「そうでしょうか」

執事が人差し指を美伽に向けた。

「あの方の弁当の野菜類が腐っているみたいですが?それは?」

「もう!!うるさいわね!!!執事は黙ってなさい!!」

そう言って杏奈は自分の教室へ戻って行った。執事は、学校から出て、衣装を戻して車の中で杏奈の帰りを待った。

〜能力者プロフィール〜

能力者名

睦月 隆


能力

電気を操る能力


ステータス(10点満点中)

見た目8・頭脳7・攻撃力7・スピード6・器用9

精神9・体力5・友情10・悪の心0・善の心6


弱点

体で電気を蓄えているので、電気を使い切ると、段々と力が弱くなり、最終的に普通の人間になってしまう。充電したら元に戻る。


「今回は隆君の能力の紹介だね」

「睦月君は確か2年前に兄と決別したのよね」

「うん。その時の話は当時よく聞いたわ。まぁ詳しくは第1話を見てね」

「あらそう。そして能力には色々と種類が分かれているみたいなの知ってた?」

「どういう事?」

「まぁ大きく分けると、私みたいに体全体が能力の能力者。そして美伽みたいに何かを操る系の能力者。睦月君は、後者のタイプね」

「隆君の能力を詳しく説明すると、体が電池みたいな感じで、電気を蓄える事が出来る。そしてそれを好きな時に好きなだけ放電する事が出来るの。そしてその放電した電気を操る事が出来るみたい」

「あぁ。という事は、町中で携帯触ってて、電池が切れそうでも・・・」

「隆君がいれば、充電出来る!!」

「結構便利ね。今度から買い物に行く時、睦月君を連れて行こうかしら」

「その時は私もついて行くわ」

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