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第23話 塀に引きずり込む

〜5月2日〜

美伽は隆に一昨日の事を話した。

「そんな事があったのか」

「うん。全然駄目だった・・・」

「それで覚醒したって言ったが、どんな能力になったんだ?」

「それはね」

美伽はその事についても話をした。隆はそうかと言った。

「それにしても兄貴らしいな。自分から殺しに来るなんて・・・兄貴はすぐに自分で行動しようとするからな。しかも1人で」

隆はスマホを開けて、霧矢に電話した。

「どうしたの?」

「それを霧矢にも言う。あいつの役割は主に、兄貴の居る場所を探す事だからな。少しでも情報が手に入ったら、教える。もしかしたら何か分かるかもしれん」

「そうだね」


〜放課後〜

「あの時美伽が居なかったら、何も出来ず死んでたわね私」

夏子は頭を掻きながら言った。1人で今家に帰っている途中である。周りは高めの塀に囲まれており、幾つか十字路のある住宅街で、最初の十字路を右に曲がり30m程先に夏子の家がある。この時間は、あまり人通りは少なく、夏子の家にも誰も居ない。

「家帰ってゲームでもしようっと」

十字路が見えて来ると、人の気配がした。

「うん?」

周りを見渡したが、誰も居なかった。気の所為だと思い、前に進むと今度は後ろから足音が聞こえた。振り返るとやはり誰も居なかった。

「これは・・・?」

どこを見ても誰も居ない。夏子は、あまり道の真ん中に居ると危ないと思い、すぐに塀に背中を付けた。

「一体どこに・・・?」

もう夏子は分かっていた。今近くに敵が居ると・・・。しかしどこに居るのかは分からない。深呼吸して、落ち着こうとすると、突然背後から手が出てきた。

「これは!?」

「捕まえたぞ?火田 夏子!!」

後ろを見ると、塀から手が出ていた。

「お前の情報は全て知っている。身長167cm。年齢15歳で、今年の8月3日で16歳になる。スリーサイズは、B86、W63、H72。好きなアニメや、漫画のジャンルは恋愛。ゲームはFPS。家族構成は、父と母と弟の4人家族。能力は小学6年生の時に突然出てきて、体全体が炎になれる。そうだろ?」

かなり詳しかった。何故スリーサイズまで知っているのかは知らないが、とにかくここまで敵は調べているのかと思うと、怖くなった。

「離しなさい!」

「嫌だね。このまま塀の中に閉じ込めてやる」

段々と夏子の体が、塀の中へ埋まって行った。

「これは・・・体が!!」

「俺の能力はな。殺すというより拷問や、誘拐とかに使うんだが、顔を壁や塀に埋めると、窒息死させる事が出来る。このままお前を塀の中の世界に送ってやるよ」

男の顔が出てきて、夏子の耳元でそう呟いた。夏子の背中が塀の中へ飲み込まれた。

「うっ!」

「ほらほら」

「この!!」

体を燃やして、背中の部分を取り外し、何とか脱出出来た。脱出するとすぐに背中を再生させた。

「チッ。だが逃しはしない。ここでお前を殺す」

男は塀の中へ戻った。すると今度は地面から手が出てきた。

「なっ!?これは!!」

「塀や壁の中だけだと思うなよ。どうやってここまでお前を追ってきたと思っている。お前の帰り道ずっと塀や壁があったと言うわけでもないのに、どうやって気付かれず後を追っていたと思う」

「まさか・・・地面の中にも!?」

「その通りだ」

膝の所まで一気に沈んだ。

「こうなったら足を斬り捨てるしか!」

手刀で足を斬ろうとすると

「おっと危ない危ない」

男の体が地面から出てきて、両手を掴まれた。

「そのまま沈め!!そして死ね!!クソアマ!!」

足で夏子の顔を踏み、地面の中へ押し込もうとする。だがそれは出来なかった。夏子の頭が真っ二つに割れた。

「私は全身炎なのよ!物理の攻撃は効かない!!」

夏子は地面に埋まっている腰から下を引き離して、上半身だけ地面から出した。

「流石にここまで犠牲にしたら、体を完璧には治せなくなるけど、まぁ良いわ。後で家のライターとかで、火を吸収すれば回復するしね」

「チッ!」

男が塀の中に入ろうとした。すると夏子が

「逃がさないわよ!!」

と言って男の腕を掴んだ。そして腕を引っ張って

「さぁ!全身火傷して死になさい!!」

真っ赤に燃やした拳を男の右頬を殴った。

「うぐぐぐ!!」

男は顔から段々燃え始めた。

「うぐぁぁぁぁ!!!」

「これで終わりね」

「まだだ・・・まだ終わらねぇ!!」

男は塀の中に顔を突っ込んだ。そして塀から顔を出すと、火が消えていた。

「くっ!」

「火の対策はもう完璧だ!いくら火を移されても、すぐにその部分を埋めてしまえば、火が消える!!どうだ!!参ったか!!ハハハハハ!!!」

「別に顔の火は消えても良いわ。それよりあなた。気付かないのかしら?今自分の身に何が起こっているのかを」

「あぁ?」

言われてみると何故か焦げ臭かった。まさかと思い、背中を見ると、服が燃えていた。

「なにぃーーッ!?」

「どうやら顔の火に夢中で、気が付かなかった様ね。これが私の狙いよ。私は別にあなたの顔を狙った訳ではない。というよりあなたの顔が燃えようが、消されようがどうでも良かったの。服が燃えているという事を気付かれなければそれだけで良かったの」

「熱い!!早く脱がなくては!!」

「人間は火傷し過ぎると死ぬというけど、まぁ全身に火傷を負ったら死ぬわね。少なくとも・・・」

「あがぁぁぁ!!」

間に合わなかった。全身に火が移りそのまま地面にバタンと倒れた。

「ふぅ疲れた。私の能力は無駄に体力を使うから嫌なのよね。それより早く家に帰って、火を補充しなきゃ」

一昨日の事もあって夏子はもうクタクタに疲れていた。

〜能力者プロフィール


能力者名

塀山ヘイヤマ 土豪ドゴウ 26歳


能力

土、壁、塀の中に潜る、もしくは人や物を引きずり込む


ステータス

見た目4・頭脳5・攻撃力7・スピード6・器用8

精神5・体力3・忠誠心6・悪の心7・善の心0


弱点

塀の中などでは移動出来ない為、いちいち移動する時は塀から出なければいけない。


「どうだった?この土豪とかいう男は」

「まぁまぁね。まぁ一昨日に景都と戦ったから、なんかそこまで強くは感じなかったわね」

「でも体下半身持って行かれたんでしょ?」

「うん。まぁ別に私の体は炎だからね。また補充すれば治るし」

「夏子みたいな能力のタイプって、何か弱点あるの?なんか弱点がないように思えるんだけど」

「あるわよ。私みたいな体全体が変化する能力は、使うと段々と体力が奪われるの。あなたは全力ダッシュを1時間や2時間ぶっ通しで走れる?」

「無理」

「そう。それと同じ。私のこの能力はずっと炎でいられる訳じゃないの。だから無敵ではないのよね」

「なるほど。能力には必ず?」

「弱点がある」

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