第10話 岩人間 その1
〜4月21日〜
隆は買い物に出かけていた。
「ギリギリ足りたって感じだな。まぁ口座から下ろせば、良いだけの話だけど・・・」
めんどくせえと頭を掻いていた。因みに隆はちゃんとアルバイトしているので、金は口座の方にある程度入っている。
今日買ったのは高さが大好きな飲み物コーラゼロと、漫画、そしてゲームである。
「はぁ。まぁ良いか。家に帰ってゲームでもしよっと」
店から出て、帰り道を歩いていると、ある工場をしている所の前で、ある高校生と肩をぶつけた。するとその高校生は、隆の肩をガシッと掴んだ。
「おい。てめぇ人にぶつかっといて、よくもまぁ黙って無視出来るな。普通はごめんなさいって謝るもんだろう?」
「あんた誰だよ。うちの高校のやつじゃねぇようだな。制服が違う」
「あのなぁ。見た感じ年下だろう?お前」
男は隆の胸ぐらを掴んできた。隆は男を睨んだ。
「年上には普通敬語だろ?なぁ」
(めんどくせぇな)「はいはい。すみませんでした」
一応謝った。がしかし
「うぐっ!!!」
腹に激痛が走った。そして後ろの工事現場の所まで吹き飛ばされた。
「がはっ!!」
口から血が出てきた。
「てめぇ・・・」
すぐ横にある柱を掴んで立ち上がった。するとあの男が隆に近付いてきた。右手を見ると、なんかゴツゴツとしていた。
「俺の名前は岩谷 茂。景都様からお前を始末するように言われている」
「そんな事。能力者で俺に攻撃してきた時点ですぐに分かる」
まだ腹が痛かった。能力者の特徴の1つに、一般人よりも運動神経や、握力などと言った力が強いというのがある。そして茂のあの手。どんな能力なのかは、大体分かった。
(奴の能力は見た目からすると、恐らく体を岩に変えられるみたいだな。あのゴツゴツとしている手がまるで岩みたいだ)
「カッハッハッハッ!!!能力に気が付いたみたいだな。そうだよ。俺は体を岩に変えられる」
近くにあった鉄の棒を持って、両手で曲げて、折った。
「まぁお前に能力がバレても問題ない。電気と岩というのは、相性がめちゃくちゃ悪いからな」
そう言うとさっき折った鉄の棒2本を投げてきた。
「くっ!!」
鉄の棒をなんとか避けたが、少し肩を掠った。茂は隆に向かって歩いた。すぐ目の前まで行くと、拳を握り締め、隆の顔面を殴ろうとした。
「死ねい!!」
隆は顔を引き、避けて、拳に電気を溜めて、茂の顔面を殴った。しかし
「うぐぁ!!」
逆に隆の拳にダメージが行った。拳から血が出ている。
「どうした?その程度か?」
茂の顔は岩になっていた。
「顔も・・・変えられんのかよ」
「あぁ。当然だろ?」
足の裏で隆の腹を蹴った。
「ぐぁ!!」
腹を抱え膝を落とすと、今度は隆の右の顳顬を今度は蹴ろうとした。両手でガードした。
「無駄だ!!!」
右腕からボキッ!!と嫌な音がした。その瞬間右腕に激痛が走った。
「うぐ!!!」
「すぐに殺さなくても良い。ゆっくりと、じっくりと、たっぷりと痛ぶって殺してやるよ」
諦めずに左手で茂を殴ろうとした。すると左手を握り締められた。そして右手も一緒に握り締められた。
「どうだ!!」
ググっと強く握られた。バキボキバキバキと次々と骨が折れていく音が聞こえた。
「ぐぐぐ!!くっそ!!!」
足の裏で茂の体を押して、自分の体から離した。そしてすぐに手が動くか確かめた。なんとか動かす事が出来た。しかし爪などから血が出ていた。
「くっそ・・・。今までの中で1番強いじゃねぇか・・・」
隆は茂を睨んで言った。茂は笑っていた。そして隆は左手と足を使って、茂から逃げた。
「どうした?逃げるのか?」
「くっ逃げるしかない・・・。俺の能力じゃあ、あいつの能力とまともに戦えない・・・・・・どうすれば」
ここの工事場は、中途半端に出来ているので、色々と入り組んでおり、なんとか茂から逃げる事が出来た。しかしまだ近くに居る。隆は隠れたり、歩いて茂から逃げたりを繰り返しながらも、茂を倒す方法を考えていた。
暫く進むとさっき茂が投げた鉄の棒が、目の前の壁に刺さっていた。
「これは・・・」
左手で引っこ抜いた。そして壁の隅に隠れて、茂が来るのを待った。足音で近くに来るのが分かった。
「どこにいるんだ?」
茂が来た。鉄の棒を強く握り締めた。
「来たな・・・」
壁に背中を付けて、構えた。
「どこにいるんだ?さっさと出てこい」
そして遂に茂が目の前に来た。大きく振りかぶって、鉄の棒を茂の顔面に向かって振った。当たった。
「ぐっ!!!」
流石の茂もいきなりの事だったので、驚きよろめいた。顔の岩も少し砕けた。
「何を・・・」
「オォラァ!!」
そしてまた鉄の棒で、茂の顔を殴った。岩がまた砕けた。
「ぐはっ!!!!」
流石の茂も壁に手を付けた。よし!と思った隆は、茂の背後に周り、後頭部に向けて、鉄の棒を振った。しかしガシッと止められた。
「くっ」
「貴様!!」
「ぐはっ!!」
隆の顔面に茂の岩の拳が当たった。隆は吹っ飛んだ。
「まだ・・・か・・・」
思っていたより茂が硬かった。しかし顔にヒビが入っていた。
「あと少し・・・あと少しで・・・」
隆はまた立ち上がった。
〜能力者プロフィール〜
能力者名
岩谷 茂 18歳
能力
体が岩になる能力
ステータス
見た目5・頭脳5・攻撃力10・スピード1・器用2
精神4・体力8・忠誠心5・悪の心7・善の心0
「こいつの弱点なんなんだろうね」
「まぁ岩だから水なんじゃない?」
「だとしたら、私が隆君のところに行って助けに行かなくちゃ・・・隆君が死んじゃうぅぅぅ!!!」
「落ち着きなさいよ。大丈夫でしょ。睦月君の事だし」
「でももし死んじゃったらどうしよう・・・というより、あんだけ骨を折ったりしちゃってるんだから、もし生きて帰れても、後遺症が残るかも・・・あわわわわ!!!」
「落ち着きなさいよ・・・。もう睦月君の事になるといつもこうなるんだから・・・」