あけましておめでとう。
簡単に終わらせました。
ただのメッセージです。
もうすぐに、今年が終わる。
ふと、壁におとなしく掛けられている時計に目を向けてみると、二本の針は十一時五十五分を示していた。今年も、あと五分だ。
初詣には面倒くさくて行かないけれど、このこたつの中も捨てたものじゃない。しばらく放置してあった三房まとまったミカンをそのまま口の中に放り込む。少し酸っぱい。
あまり噛まないで、飲み込む。それから、俺は隣に目をやった。
ケータイのタップ音を鳴らしながら、画面とにらめっこを続ける彼女の頬を、俺は軽くつついてやった。
「今年ももうすぐ終わるぞ」
俺がそう言うと、彼女はこちらを向かずに口を開く。
「わかるよ。あけおめ」
「いや、早いよ」
「はいはい。いま忙しいから、ちょっと静かにしてて」
「えー、なんで」
「モンスト」
「やめなさい」
「じゃあ、シャドバ」
「いやいや……。もっと、こうさ、恋人っぽく年を越しませんか? さっきからケータイ触りすぎじゃない?」
「んー、気が向いたらね」
彼女はそう残して、いまだにケータイを弄っている。大晦日くらいその端末を休ませてあげればいいものを。しかもケータイを横にしている。あぁ、シャドバか。
呆れるというか、彼女らしいっちゃそうなのだろうが……まあ、いいか。
それから、はっとして、急いで時計にまた目をやる。
午前〇時、半分過ぎ……。
「ほらー、なんかぐだぐだ今年終わったじゃんかー」
そう溢して再び彼女の方へ顔を向けた。
すると、時分の唇に柔らかい感触が伝わってくる、と同時に彼女の顔は時分の顔のとても近くにあった。
そして、ゆっくりと彼女の顔が離れていき、口での呼吸がやっと可能になった。
「どう? 恋人らしいでしょ?」
彼女は俺に対して首をかしげてくる。
「びっくりしすぎて、よく分からなかった」
俺はそう答えて、もう一度、彼女と唇を重ねる。
終えて、二人ともはにかみ顔を浮かべながら、俺たちは毎年恒例のあの言葉を声に出す。
――あけまして、おめでとうございます。
みなさん、明けましておめでとうございます!




