悪役令嬢は既婚者です!? その1
やっぱり悪役令嬢ものが好き
……状況を整理しよう。
混乱する頭に手を添えながら、私はひとまず冷静になる為目を瞑り、大きく息を吐いた。
私は、クーレイア・ショーヤーン……いや、クーレイア・メイローン。
今年十六歳で、一週間後に王立学園に入学する。
ショーヤーン候爵家の次女で、幼少時からの婚約者がいる……いや、いて、つい昨日、その婚約者と結婚した。
一般的には、十八歳となり成人を迎えてからの婚姻という流れになるのだけれど、例外もあるわけで。
私の場合は、その例外だったというだけ。
それというのも、私の婚約者たるメイローン公爵家の嫡男ヒースニールが、『クーは可愛い過ぎるから、学園に入ったら絶対男共に狙われる!クーが危ない!婚約だけじゃ不安だ、今すぐ結婚しよう!!』と言い張ったせいであるのだが……まあ、それはいい。
結婚した事でリミッターが外れたらしいヒースニールに、その深い深い愛をこれでもかと伝えられまくった初夜になり、結果気絶し、気づけば朝で、今全く起き上がれないほど体が辛いのも、まあいいとしよう。
問題は、昨夜気絶した後に見た夢である。
……あれは、前世の記憶だ。
地球という星の、日本という国に生きていた私の記憶。
その記憶の中のとあるものにより、私の頭は現在混乱させられている、というわけで。
……まさかこの世界が乙女ゲーの世界で、私が悪役令嬢だったなんて……!!
"王立魔法☆恋☆学園"というタイトルの乙女ゲーでは、悪役令嬢は私クーレイア・ショーヤーンただ一人で、ヒロインの女の子が攻略対象の誰かのルートに入ると、私がその相手の婚約者として登場し障害となって立ち塞がる。
つまり、私の婚約者=ヒロインが恋する攻略対象、という事なのである。
「嘘でしょう……」
私は呆然と天井を仰いだ。
あの、私を溺愛しているヒースニールが、一年後には私を捨ててヒロインと相思相愛になるの?
でも、もう結婚しちゃったのに、どうするの?
離婚?
たった一年で離婚なの?
そんなの、酷くない!?
ああもう、どうしてもっと早く思い出さなかったの、私!
ヒースを奪われないように対策を考える時間が、もう一週間しかないじゃない……!!
今から一体、何ができるのよ!?
「クー? 起きたのかい?」
「! ……ヒース……ッ!!」
「ん? ……どうしたんだ? 顔が真っ青じゃないか?」
「っ……ヒース……お願い、私を嫌わないで……捨てないで……!! 一年で離婚なんて、嫌……!!」
「……うん? 何を言っているんだいクー? 俺が君を嫌う……捨てる? 一年で離婚……? ……そんな事を言うなんて……おかしいな、愛情表現、まだ足りてなかった? なら、もっとたくさんしなきゃだね」
「…………えっ?」
「大丈夫。学園が始まるまではまだ一週間あるから、時間もたっぷりあるからね?」
「えっ!? あ、あああの、ヒース……ッ!?」
「愛してるよ、クー」
ま、待って、待って!!
その一週間は対策を練る為に使いたい、の、にぃぃぃっ!?
「ふ。可愛い、クー。大好きだよ」
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