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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
11月
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99/126

7話 配役2

長くお待たせしてすみません……

 教室に入るとすぐに見つけた。先週から続く読書週間のため、図書委員は朝早くから学校に来ていることを僕は知っていた。

 月野くんと楽しそうに会話している彼女――須藤さんに向かっていくと、僕が近づいてくるのに気がついた須藤さんが「おはよう」と微笑んできた。

 その笑顔にモヤモヤと考えていた僕の気持ちが一気に抜かれてしまったような気がした。僕も「お、おはよう」と言う。隣にいた月野くんも「おはよう、雪」と言ってくれた。



 って、そんななごんでいる場合じゃない!



「須藤さん、これなんだけど……」



 僕は昨日LINEで送られてきたばかりの、須藤さんが決めた配役表を彼女に見せた。

 そこに書かれていたのは、



 加藤雪・・・騎士役



「うん、雪くんが騎士役だね」



「でさ、ここに王子だの魔法使いだのって主人公っぽいものがいっさい書かれてないんだけど、いったい……」



「それは主人公が騎士さんだからだよ」



 さも当たり前のように須藤さんはそう言ってにこりと微笑んだ。



「無理、無理、無理、無理、無理!」 



「大丈夫よ。雪くん騎士役似合うもの」



「そ、そういうのは徹くんとか、小田くんとか! あ、意外に海さんもいけると思うんだけど!」



「意外にってどういう意味だよ」



 後ろから声がかかり、驚くあまりに「わっ!」と叫んでしまった。振り返ると、海さんが腰に片手をあてて立っていた。その表情は少し呆れている。



「遥、ついでにわたしもいいか?」



「ええ」



 海さんは鞄からスマホを取り出すと、その画面を須藤さんに向かって付きだした。



「どうしてわたしがお姫様の役なんだよ!」



 まったく僕と同じことを言った。

 


 僕は手元にあるスマホからもう一度配役を見直す。たしかに、「遠藤海」の欄に「お姫様」とあった。



 須藤さんは悪びれた風もなく(まあその必要はないのかもだけど)、やはり微笑んだまま、



「だって遠藤さん、女の子だし……」



「そういうのは普通、篠田とか杏子とか。それっぽいヤツいるじゃん! 遥でも適役だろ?」



 ずいっ、と身を乗り出す海さんに、須藤さんは困った顔をした。



「でも私、脚本だし……」



 たしかに配役としては充分な仕事を成している。

 海さんもそれ以上何も言えなくなってしまったか、口をつぐんでしまった。いささか不満そうな顔をしながら。



「それに私、ただ何となく決めたわけじゃないのよ? 私がこの脚本を書いてたとき、その役それぞれをクラスメイトでイメージしたら、騎士は雪くん、お姫様は遠藤さんが1番最初に浮かんだんだもの」



「で、でもさぁ」



 騎士が僕でお姫様が海さんなのだとしたら、この配役的に。



「もしかして、ヒーローが僕でヒロインが海さんなの?」



 嫌な予感は的中した。



「ええ、そうよ」



 須藤さんはやはり微笑んだままだ。その微笑みがなおのこと恐ろしい。

 彼女って、こういう人だったっけ?

 何かまるで、全然別人を相手にしているみたいだ。



 そう思いながら黙って成り行きを見守っていた月野くんに視線を投げると、彼は「やれやれ」と言いたげに首を左右に振って呆れ返っていた。

 幼馴染みがこんな反応なんだ。これは何を言っても、須藤さんが引き下がることはないだろう。



 諦めるしかなさそうだった。

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