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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
11月
95/126

3話 ホームルーム

今回より、スマホ投稿にしました。これからもよろしくお願いします!

 結局僕は意気地無しだ。

 どういう理由かはわからないけれど、ともかく早退してしまった海さんを追いかけることなく、僕はため息と共に教室に戻った。



 ちょうどよく、朝のホームルームが始まるチャイムが鳴りだした。



 それと同時に徹くんが教室に入ってくる。

 もしかしたら彼はそれを狙っているのかもしれないと、僕はひそかに思った。徹くんならやりかねないと思って。

 いつもだったらそのあとに舟久保先生がやってきて徹くんを叱るんだけど――、やってこない……。



 もしかして小野塚先生の件について対応に追われてでもいるんだろうか。



 みんな同じ思いらしく、そんなことをささやくクラスメイトが何人かいた。

 そのときだった。



「おらぁ、みんな席に着け」



 大きな声をあげて教室に入ってきたのは、副担任の秋庭先生だった。



 ざわついていたクラスメイトたちが慌ててその輪を散らしていく。僕も慌てて自分の席に着いた。



 秋庭先生はクラスメイト1人1人の顔を確認して、「遠藤はどうした?」と聞いてきた。



 僕は慌てて口を開く。



「あっ。た、体調不良だそうです……。さっきまで、いたんですけど……」



 もしかしたらすぐ見破られてしまうかとヒヤヒヤしたけれど、秋庭先生は「そうか」とうなずいただけだった。



 どうやら納得してくれたらしいことに、僕は少しホッとした。



 秋庭先生は出席簿にペンを走らせてから、まるで場の空気を変えるために、教室じゅうに響くような大きな咳払いをした。



 僕らは反射的に、ピンと背筋を伸ばすことになる。



「今朝のニュース、おまえら見たか?」



 秋庭先生の言葉を皮切りにするかのように、さっきまで静まっていたはずの教室がざわめきを取り戻した。



 秋庭先生はため息をつく。



「その様子なら、見たということだな」



 みんな、何も言わない。



 僕は自分の体が震えていくのを感じていた。

 同時に頭も痛くなっていく。



 まるで、先月のあの事件の恐怖が、今さら襲ってきているかのような……。



「――き、雪」



 名前を呼ばれて、ハッと我に返ると篠田が心配そうな顔をして僕の顔をのぞきこんでいた。



 みんなの視線もいつの間にか、秋庭先生から僕に移っている。



「雪、大丈夫か?」



 秋庭先生にしては珍しく、人を気遣うような目を向けている。



 篠田は不安そうに、眉間にシワを寄せて僕を見ていた。



「先生。その話、やめにしませんか?」



「大丈夫です」



 篠田の気遣いを僕はさえぎる。



 ちょっと頭が痛いくらい、気にしてなんていられない。



 僕はもう一度念を押すように、「大丈夫ですから」と繰り返した。



「気分が悪かったらすぐに言えよ」



「はい」



 秋庭先生は「さて」と言ってもう一度みんなのほうを向いた。僕らはまた姿勢を正す。



「かつてこのクラスの担任だった小野塚が、遺体となって発見された。小野塚はこのあいだ学校で事件を起こしたばかりというせいもあり、職員室ではマスコミや警察への対応に追われていてちょっと忙しい。とりあえず今日は臨時休校ということで、これからすぐお前たちは一斉下校をすることになる」



 一斉下校……。



「世間の注目がこの学園に集まりつつあるせいで、おそらくお前たち生徒に何かしらの影響があると思う。なるべく学校側で対処していくとはいえ、もしも何かあったらすぐに学校側に連絡をくれ。それじゃあ気をつけて帰ってくれ。」



 そうして秋庭先生は教壇を降りると教室を去っていった。



 頭が、痛い……。



 まるでたった1日で、この学校が変わってしまったかのようだ。



 心の奥の奥の、そのまた奥のほうで、誰かが叫んでいる声が聞こえる気がした。



***



「ここで降ろしてください」



 タクシーの運転手は言われたとおりにブレーキをかけて、車を停めた。



「ありがとうございます。これ、おつりは結構ですから」



 乗客が差し出した、運賃にさらに上乗せして払われた金額に運転手は一瞬目を疑ったが、追及することなくその子どもを降ろすとそのままどこへともなく走り去った。



 タクシーから降りた海は、深く息を吸い込んで、そして吐いた。



 車で学園から3時間。着いた場所は田んぼや畑、森などに囲まれたなんとも辺鄙な田舎町だった。昼間だというのに人っ子1人として歩いておらず、聞こえるのは近くを流れる用水路の流れる音と風が吹く音くらい。



 懐かしいな、と海は思った。とはいえこんな場所。小学生の頃の長期休暇で何度か来たくらいで、最近はほとんど訪れていなかったが。



 ポケットに入れておいたスマホを取り出して、いつも一方的にかけられている電話番号を、逆にこちらからかける。



 月末の定期連絡のときくらいでないと電話にでてくれないはずなのに、緊急時ということを理解してくれているのか、すぐに相手は電話に出てくれた。



「僕だよ。もう近くに来てる。大丈夫、ここまでタクシーで来たから。あと歩いて1時間はかかると思う。うん、待っててほしい」



 そうして、海は通話を切った。

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