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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
10月
91/126

10話 実行

 後ろに引っ張られた僕は、そのまま誰かによって受け止められた。




「大丈夫か!?」




 直後に後ろから声をかけられてハッと我に返る。すぐに後ろを振り返ると、そこにいたのは浦園くんだった。





 違う、他にも。




「てめっ!」




 正面に向き直ると、小野塚に飛びかかった徹くんは、うまく懐に入ったかと思うと、小野塚の顔に何かを射出した。



 霧吹きなのか、水っぽいものがぶわっと飛び出す。




「ぎゃっ」




 小野塚は小さく叫び声をあげると、一瞬ひるんだ。




 その隙を見逃さない徹くんではない。すぐさま小野塚の手から凶器の斧を奪い取ると、それを教室後方に向かってぶん投げた。


 斧は勢いをつけられたまま、壁にぐさっとささった。



「てめぇ!」




 小野塚が叫びながら、徹くんに向かって突進していく。さっき徹くんに何かを吹き付けられた反動なのか、目をつぶっているけれどその手はまっすぐ徹くんに向けられ、そして走り向かっていった。




 思わず「危ない!」と叫びそうになったところで、僕の横から誰かが飛び出してきた。




 島田さんだ!




 彼女は苦しそうに顔をゆがめながらも、小野塚へ手をのばしてその足をつかんで転ばせた。




「ぐおっ!」




 さらにその背中に、やはり僕と浦園くんの後ろから飛び出してきた小田くんが飛び乗り、小野塚の動きを封じた。


 机や椅子ががたがたがたっと音をたてて、倒れだす。



 小野塚がひるまない。じたばたと暴れながら、ギャーギャー叫んでいる。




「うわっと!」




 その上でうまくバランスをとっている小田くんはさながら、暴れ馬に対処しようとする騎手のようだった。




 しかしそれもすぐに終わった。小田くんたちの正面にいた徹くんが動きを封じられた小野塚の首の後ろを手刀で軽くたたいて、あっという間に気絶させてしまった。




 実に鮮やかだった。




 小田くんは立ち上がり、徹くんと島田さんとハイタッチなんかしている。






 徹くんがふと、僕を見た。




「大丈夫? 雪くん」




「あ……うん……」




 安心してほっとため息をついた瞬間、急に僕の両足から力が抜けてしまった。




「おっ」




 へなへなと崩れ落ちる僕の腕を、後ろにひかえていた浦園くんがすぐにつかんでくれた。




「作戦成功だな」




「さく、せん?」




 小田くんが笑って言った言葉に僕が首をかしげたそのとき。




「雪!」




 聞きなれた声がして驚いて振り返ると、そこにいるはずのない人物が苦しみと安心をないまぜにした表情で、教室のドアをささえにしながら立っていた。




「海……さ」




 なんでここに?




 そう疑問を返そうとした直後、彼女が僕に飛び付いてきて僕は今度こそ床に倒れた。




「わっ」




 海さんは僕の首に腕をまわして、その肩を震わせている。体はかなり熱かった。あたりまえだ。だって彼女はインフルエンザにかかっていて、本来だったら学校に来てはいけないのだから。




 それなのに、どうしてここに来てくれたのかはわからない。




 わからないけど、震えている彼女のその肩が、僕をどれだけ心配してくれたのかが伝わってきて、僕は思わず「ごめん」と謝った。




 そして、僕は徹くんに軽く頭を殴られた。




「いてっ……って、何すんのさ」




「ごめんじゃないでしょ」




 彼はやれやれとあきれた表情。僕はわけがわからず首をかしげた。




「そういうときは、ありがとうって素直に言うんだよ」




 ああ、そうか。




 僕はあらためて教室のなかを見渡した。




 普通の、ごくありふれた教室のいち風景。それがたった半日もたたずして、非日常へと変わってしまった。




 そのなかで取り残された僕。それを救ってくれたのは。





 徹くん、浦園くん、小田くん、島田さん。





 

 そしてきっと、クラスのみんな。



 教室に向かって走ってくる足音が他にもいくつか。結構数が多い。







 僕は笑って、「ありがとう」とつぶやいた。

戦いを書くのはとても難しいですね。あと行間の調整とか。すごくへたくそ~とか思いながら、今回挑戦させていただきました。

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