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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
10月
90/126

9 作戦会議3

「成功したのか!?」


 海がベッドから立ち上がろうとしたところを、えみりは慌てて制した。

 パソコンのほうを向いていた蓮人が振り向き、海の言葉に「ああ!」と強くうなずく。パソコンの画面はいまだよくわからない暗号まがいのもので埋め尽くされている。素人目にはまったく理解できないものだ。


 しかし彼によると、今カーソルをクリックさせればすぐにでもハッキングは成功するということだ。


「その前に作戦だ、作戦! どうするんだよ」


 光の言葉に海はハッと我に返る。

 いくら学校のシステムをハッキングができたからといっても、まだ肝心の作戦がたてきれていない。


 そもそも学校のシステムをハッキングしたのは、教室内にある監視カメラを作動させるためだ。中等部全学年のB組の教室にのみ存在している、監視カメラを。


 みんな、それでいつも授業を監視されていることを知っている。いつも休み時間を監視されていることを知っている。いつも放課後を監視されていることを知っている。


 そのいつもB組の人たちを監視する、ある意味ではいまわしいそのカメラを、今回は逆に利用してしまうのだ。


 他のクラスや学年の教室にはどうしてかその監視カメラは存在しない。そのカメラが存在するのは、B組だけだ。そしてどうしてそのカメラがB組に存在しているのか、ほとんどのクラスメイトが知っている。


 どうしてカメラが設置されているのか、その理由をいまだ知らないのはB組では3人の人間だけだった。




「徹、キミに窓からの侵入を頼む。ただ、なるべく安全な方向で、じゃなかったらコノハがうるさいし……」


「べ、別に騒いでないわよ!」


 コノハは顔を真っ赤にして憤慨した。

 海はしかし、あっさりとこれを無視。


「次に正面突破組。もちろん、この作戦は運動神経がいいやつのほうが、いい……。小田、浦園、キミたちまずふたりだ……。頼める?」


「おう!」


「わかった」


 光が元気よくうなずくいっぽうで、奏羽は静かに了承した。


「そして、島田(しまだ)絵菜(えな)


 名指しをされた絵菜はびくん、と肩を震わせて、恐る恐る友人の澄野(すみの)(かえで)の陰から姿を現した。


「キミ、いける?」


「……えっと」


 絵菜はもじもじとしながら、困ったように顔を伏せた。彼女ははっきり言ってクラスでは目立たない体質の人間だ。小学生時代にはいじめに遭い、それが彼女の対人恐怖症を余計に刺激してしまっていた。

 そんな彼女の唯一の特技は水泳だ。夏にあったプールの授業ではひとりだけS評価だった。しかしそれは彼女からしてみれば当たり前のことなのだ。


 島田絵菜は中学生にして、水泳において全国大会で優勝ができるほどの強さを持っているのだから。


「もちろん、陸と水とじゃ運動神経に差はでてくるだろうけど、キミはえみりの次に体育の成績がいいはずだよ……。それはみんな、知ってる……」


 海の言葉に嘘も偽りもない。


 絵菜は下唇をきゅっとかみしめた。


「絵菜ちゃん」


 楓が声をかけると、絵菜と初めて目があった。


 絵菜にとっては、楓の目を見るだけで充分だった。


「や、やってみる、よ……。雪くんは、大事なクラスメイト……だから」


「ありがとう!」


 海の声が一気に明るいものとなる。そんな声と表情でお礼を言われてしまったら、自然と絵菜は「まかせて」としか言えなくなった。


 その「まかせて」は、不思議と絵菜に力をあたえた。


「じゃあもういいな?」


 それまでの様子を黙って見守っていた蓮人は、制服のポケットをごそごそやってそこからある物を取り出してデスクの上に置いた。


 黒い耳栓のようなものが、4つ。


「何これ」


 心愛(ここあ)がちょん、とそれらをつついた。


「通信機。耳にはめるんだ。これを突撃部隊ははめておいて」


 徹、光、奏羽、絵菜はそれぞれその黒い耳栓のような小型通信機を手に取り、さっそく耳に装着した。


「その通信機では互いに会話のやりとりができるようになってる。突撃の合図とか指示は僕の……このスマホでだすから」


 今度は、耳栓が入っていたほうのポケットとは反対のポケットをあさって、蓮人はスマホを取り出してそれもデスクの上に置いた。


「キミたちがこの部屋から出たと同時に、僕は監視カメラを完全にハッキングする。もって数分だろう。もしかしたら遠隔操作がバレて自動で強制ロックがかけられるかもしれない」


「……わかった」


「じゃあ行こうか!」


 徹の言葉を合図に歩き出した4人の背中に、慌てて声をかける者がいた。 


「待って」


 それは、赤石(あかいし)杏子(きょうこ)だった。


 彼女も何やらポケットをあさっている。


「これ」


 そうして取り出した物を、徹に渡した。

 

「ひとつしかないんだけど、何かしらの役には立つと思うの」


 徹はしばらくのあいだ、杏子から手渡された"それ"を見つめた。


「……うん、サンキュ。とりあえず預かっとく。必要になる可能性大だろうけど」


「うん」


 海は近くにいたえみりの肩を借りながら、よろよろと立ち上がった。


「頼んだぞ、4人とも……」


 海の言葉に4人はそれぞれ、力強くうなずいた。


「任せとけ!」

5月編の大幅改稿を実施しました! とはいえ、話数をかなり分割しただけですが。今までとても読みにくかったと思います。それでも読んでくれた方、これから読もうとなさっている方、感想も評価も本当にありがとうございます!

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