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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
10月
88/126

7 作戦会議1

 1時間前。


 移動したB組の面々は、さっそくたどり着いた保健室を拠点にして対策を練ることにした。

 コノハとえみりに肩を貸してもらいながら、海はベッドに腰をかけた。


「B組の人間がほとんどいなくなったら、さすがに先生もビビるかな?」


「あの人数だし、バレなきゃいいんだよ。てかどうせ、舟久保か秋庭(あきば)が気づかない限りはバレねぇだろ」


 時間的には9時半を過ぎてまもなく10時になろうとしているところだった。本来だったら休み時間の最中だったはずだ。

 海はふぅ、と息を吐いてから状況の整理を始めた。


「教室に残っているのは雪だけで間違いないんだろうな」


 その質問に委員長の林道(りんどう)直江(なおえ)がうなずいた。


「さっき点呼とったときには雪くん以外全員いたし、間違いないはずだよ」


「教室にいるのは……雪と小野塚って、わけか」


 海は頭をおさえながら言った。正直、今頭がちゃんとまわっているのかもわからない。マンションから家までの道のりを、海は歩いてやってきた。タクシーを拾うという手もあったが、財布は置いてきてしまったのだ。

 こういうとき、学校と家が近いのはものすごく便利だということが唯一の救いだった。


「せめて……、教室の様子がわかればいいんだけど、な……」


「それだったら僕に任せてよ」


 立候補したのは春日野(かすがの)蓮人(れんと)だ。彼はメガネのブリッジを軽く押し上げながら、にやりと微笑んだ。

 言うが早いか、彼はすぐに保健室にある専用のパソコンの電源を入れた。デスク前の椅子に腰かける。

 

 パソコンが起動されると、すぐにそこに表れたのはログイン画面だった。


「うわ……、パスワード」


 小田(おだ)(ひかる)のうめき声が聞こえた。もちろんみんな同じ気持ちだった。

 パスワードがあるなんて当たり前だ。このパソコンは岩富(いわとみ)先生の持ち物なのだ。ちゃんとロックがかかっているのは当たり前だろう。


 普通だったらそこで止まってしまうはずなのに、ところが何故か蓮人は素早くキーボードをたたき始めた。カーソルをそのままログインボタンへと持っていき、ぽちっと押す。

 すると次に表示されたのは、


 ようこそ


「って、えぇぇぇぇぇぇ!?!?」


「な、なんでわかったんだよ!」


 周りのみんなが驚くなかでひとり涼しい顔をしている蓮人に、彼のすぐ傍で様子を見守っていた外浜(そとはま)心愛(ここあ)が怒鳴るように聞いた。

 もちろん全員、心愛と同じ気持ちである。


 しかし蓮人は、涼しい顔を崩さない。彼はメガネのブリッヂをくいっとあげながら、


「こういうのは得意でね。まあほんとは自分のパソコンがあればいいんだけど、教室にあるから」


「そうじゃなくて、なんでパスワードわかったの!?」


 里香は蓮人に詰め寄った。


「まあ……勘、かな?」


 あはは、と蓮人は笑いながら、デスクを指差した。みんなの視線が自然とそちらに集まる。

 パソコンが置かれているデスクの上には治療器具の他にも、電話機だったり、おそらくは岩富先生の私物と思われる物がそこかしこにあった。


「パスワードなんてわりと単純でさ、たとえばその人の誕生日や血液型、あるいは趣味、好物なんかでたいてい占められているんだ。岩富先生が単純な人でよかったよ」


 それまで黙って成り行きを見守っていた海が、重たい体をベッドの端まで移動させて蓮人とパソコンを見る。


「……パソコンが起動できたからいいとしても、それでどうするんだよ」


「今からB組の教室がどうなってるか調べるんだ」


「どうやって」


 続いて誰かがした質問に、蓮人はにやりといたずらっぽい笑みを浮かべた。









「ハッキングするんだ」

ちなみに不定期更新ですが、『嘘は内緒の始まり』の番外編をじみに書いています。今後増やしていく予定ですので、どうぞよしなに↓

https://www.pixiv.net/series.php?id=743745

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