1 衣替え
10月編のスタートです!
体育祭、借り物競争のひと騒動から、だいたい1ヶ月以上はたっただろうか。
人の噂も七十五日……だっけ? まあともかく、あともう1ヶ月の辛抱だ。まったくもう海さんってば、冗談とはいえとんでもない爆弾を投げてくれたなぁ。
僕が今学校でなんて呼ばれてるか、海さんは気にしてくれているだろうか。
「男に見初められた男」なんて不本意にも程がある!
ちなみに海さんは「男好きの男」なんて呼ばれるかと思いきや、いやそもそもあいつは本当に男なのか疑惑が浮上し始めた。
だとしたら僕のこの意味不明な肩書きも、さっさと消してほしいもんだけど。
おかげで気楽に廊下を歩けやしない。廊下で誰かとすれ違うたびにからかわれるんだから。
それはクラスメイトもしかりだ。こっちは「公衆の面前でコクられた男」みたいな扱いをしてくるから、まだマシといえばマシかも。
10月にもなると、いよいよ秋が目立ってきた。
空に浮かぶ鱗雲や黄色に葉の色を変えていく木たち。風は冷たく、朝起きるのもちょっとつらい。長袖が目立ってきた。学校でも衣替えが始まって、各々長袖のYシャツにたまにブレザーなどを着て、厚着する人まででている。
僕はホームルーム前の、どこか騒がしい教室内でちょっとあくびをする。春だろうと夏だろうと秋だろうと、眠気は常に襲ってくる。
今日はちょっと遅いな。
僕は教室の1番後ろの席を見た。
そこには遠藤海の机と椅子がある。各々の机にはすでにその持ち主がいるなかで、けれど海さんの席にだけ、まだ持ち主が表れていなかった。
おかしい。いつもだったらそろそろ来てもいい頃なのに。
さては寝坊かな?
「どうしたの? 雪」
隣の席の篠田が話しかけてくる。彼女の机の上には文房具が所狭しと並べられている。今日はまろさんでいくらしい。最近人気の、まろまゆの柴犬のキャラクターだ。
まあ、決めたのは相変わらず僕なんだけどね。
「海さん、遅いなって思って」
「ああ~、たしかに」
篠田も同じように後ろを振り返る。
始業のチャイムが鳴った。それと同時に担任の舟久保エリ先生と徹くんが入ってきた。
舟久保先生が両手を腰にあてて、徹くんをにらむ。
「こーら、渡良瀬くん。いつも言っているでしょう? 学校に来るならチャイムの前に」
「はいはいすみませ~ん」
舟久保先生の叱責を軽く受け流し、彼は自分の席へ着いた。
まだ、海さんは来ない。
「皆さん、おはようございまーす! さて、10月に入ってもう1週間ですね。寒い日も続いていますが、元気にやっていきましょう!」
快活にしゃべる舟久保先生だったけど、その表情はすぐに曇った。
「……って、言いたいところなんだけどね。皆さんにちょっと残念なお知らせです。遠藤くんが、風邪引いちゃいました」
ああなんだ、風邪か。
季節の変わり目だし、そりゃ風邪くらい引くよね。
僕は篠田と顔を見合わせて苦笑しあった。
「それがなんとインフルエンザらしいので、皆さんお気をつけください!」
この時期にインフルエンザか~。
ちょくちょくニュースでも、インフルエンザが流行しつつあるなんて言っている。秋だからって甘く見るなってことなのか。
「さて、でも遠藤くん以外は元気そうなので特に問題はありませんね。じゃあ、今日も張り切っていきましょー!」




