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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
9月
81/126

14 借り物競争2

「位置について!」


 審判の合図が聞こえ、海たちは立ち上がってそれぞれのレーンに着いた。


「よーい……」


 パァン


 審判が空に向かって放った空砲を合図に、走り出す。

 観客席からの歓声、叫び声、悲鳴。アナウンスの声さえも、すべて騒がしいBGMだ。


 箱にたどり着く。てっぺんにはちょうど腕が入るくらいの大きさの穴があった。そこに腕を突っ込み、中をまさぐっていく。

 1枚の紙がでてくる。

 開くと、そこに書かれていたのは。



 好きな人



 あーなんて、ベタな。


 公開処刑、なんて言葉をよく聞く。不本意な状況であれ、本意な状況であれ。自分の秘密を公衆の面前で暴露してしまうことだ。


 別に公開処刑だなんて思わない。

 だけど、ああどうしよう。


 しかし迷いは一瞬だった。

 海は観客席に走り出す。


「来て」


 目当ての人間を見つけて、海は有無を言わさずそいつの腕を引っ張る。そいつは驚いているけれど知ったこっちゃない。勝てばいいのだ、勝てば。


 そう、勝てばいいのだ。


 ゴールテープを1番に切った。

 審判に確認をとってもらうと、審判は驚いて海とそいつを交互に見やった。

 海の隣にいるそいつは、まだお題を知らない。呆然とあたりを見渡して、「ここにいるの、場違いじゃない?」なんてことまで言ってくる。


 別に間違ってないよ


 そう返しておく。


 やがてアナウンスが聞こえた。


「さ、3年B組遠藤海さん。お題は……す、好きな人ぉ!?」


***


 はぁぁぁぁぁぁっ!?!?


 各所からあがった叫び声に、僕も思わず同調してしまった。


「いや、いやいやいやいや。え? う、海さん!?」


「勝てばいいんだよ、こんな茶番」


 海さんはまったく恥ずかしいという気持ちのカケラもないのか、そんなことを言ってさっさとその場を立ち去った。


 いやでも、こんなの。公開処刑もいいところ……。


 そう思ったけれど、ふと周囲の空気が変わったことに気がついた。


 僕はもう一度周囲を見渡した。


 この場を支配する空気には、2種類存在した。

 ひとつはB組。みんな驚いているようだけど、それは単純に「よく自分の好きな人を公衆の面前でバラせるな!?」みたいな気持ちの表れのようだ。僕も同じ気持ちだ。


 だけど、もうひとつは違う。


 海さんは、遠藤海は、この学校では「男子」として通っているのだ。


 つまりそれは、「男子が男子を好きだ」と公言しているようなものである。


「う、海さん!」


 僕は彼女の背中を慌てて追いかけながら、どうかこの誤解が早く解けてくれるように祈るしかなかった。


 所詮、体育祭の余興の一貫として。

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