8 手当
3か月振りの投稿ですかね。お待たせしてすみません……
円城くんの言葉に篠田が「えぇっ!?」と驚いた声をあげた。
「どーしたの?」
すぐに徹くんや近くにいた何人かのクラスメイトが僕と円城くんを中心にして集まってきて、不思議がっていた。
それもそうだろう。僕は地面に手をついて倒れているし、海さんは車いすに乗った円城くんに乱暴を働こうとしているし、そのあいだにいる篠田は僕らのあいだをあたふたとした顔をしながら、立ち尽くしている始末だった。
徹くんが倒れた僕に近寄ってくる。
「雪くん、大丈夫?」
「うん、まあ……」
頬は痛いけど、それだけだ。大したことじゃない。
「大丈夫だってさ、遠藤さん。円城を放してやれよ」
「だってこいつが!」
「海さん、僕は本当に大丈夫だから」
そう声をかけると海さんは徹くんをにらんでいた顔を僕に向けて、急に静まった。円城くんの胸元から半ば乱暴に手を放して、僕に駆け寄ってくる。
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫だって。保健室、行ってくる」
よろよろと立ち上がった僕を、篠田が「私も行くよ!」と言ってついてきた。
「ありがとう」
「肩貸そうか?」
「大丈夫だよ」
心配してくる篠田に僕は軽く笑った。
じんじんと地味な痛みを訴えてくる頬をおさえながら、保健室にたどり着いた。保健室は運動場で怪我をした場合も考慮して校舎1階に設置されているから、そこの窓を開ければすぐに入ることができた。
部屋の奥にある机で書類とにらめっこをしていた岩富先生がその音に顔をあげて、僕らに気づいた。
「なんだ、またお前か」
「はい、僕です」
岩富先生はだるそうな口調でそう言ってきたが、実はこれが彼女の素なのだろう。僕は気にすることなく、とりあえず運動靴を脱いで近くにあった椅子に座った。
「頬の怪我か? 体育祭の練習だな」
「まあそんなところです」
本当は違うけれど、僕はそう言ってごまかした。付き添いの篠田も、僕の意図をくみ取ってくれたのか、僕に合わせてくれた。感謝だ。
岩富先生に腫れた頬に湿布を貼ってもらい、その上からテープをつけてもらう。落ちないようにだ。
手当てをしてもらっているあいだ、僕は円城くんと海さんについて考えていた。
あの2人、取っ組み合いのケンカを始めようとしていたけれど、大丈夫だろうか。まあ何かあったら、徹くんあたりが止めてくれるか。たぶんだけど。委員長2人は先生を呼びに行くだろうか。もし、僕のせいで円城くんが何かお咎めをくらったら面倒だな。あとで先生に弁明しておこう。別に殴られたからって、頬が腫れただけ。頬の内側が切れたわけではないし、歯も折れてないし。
保健室のドアが開かれて、そこから円城くんが姿を現したのは少し驚いた。
岩富先生も気が付いて、そちらを見る。
「円城か。なんだ、足でも痛いのか?」
「感覚のねぇ足なんて痛くもかゆくもねぇよ」
先生相手にタメ口をききながら、彼は慣れた手つきで車イスを保健室へ乗り上げて(ドアにちょっと段差があるのだ)、僕のもとへ近づいてきた。
「悪かったな」
「気にしてないよ、別に。ただ、大丈夫だった?」
「何が?」
「海さん、キミに殴りかかってきたでしょ」
「俺が先に殴ってきたんだ。遠藤はあれだろ。おまえがやられてやり返してこなかったら、やり返した。的な」
「ああ、まあそうだけど」
話が通じるみたいで、少し驚いた。
以前までの円城くんだったら、きっとここで怒鳴ったりなんだりしていただろう。「俺は悪くねぇ!」とかなんとか、言っていたかもしれない。
彼も変わったんだな、と僕は思った。
「なんだ円城、おまえが殴ったのか」
「うるせぇ、不可抗力だ」
話を聞いただけでだいたいの事情を理解したのか、岩富先生があきれたようにつぶやく。僕に謝ってるくせして、円城くんはもう反省の色は消えていた。謝ればそれでいいや、ということだろう。
「で、でも円城くん。いきなり雪を殴ったりして。そんなの、遠藤さんじゃなくても、怒るよ」
「雪は怒らなかっただろ。それでいいじゃん」
「よくない」
篠田は少し不機嫌な様子だった。
どうでもいい話ですが、Twitterのほうで一次創作のアカウントを削除しました。これからは二次創作も一緒に行っている垢(@bookgirl_dog)で活動をしていこうと思います。きっと更新が遅くなるとは思いますが、よろしくお願いします。




