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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
6月
48/126

13話 修学旅行

 後日談。



 須藤兄は連行された警察署で、こう自白していたらしい。



「暴力を振るなんていけないことだってわかってたけど、なんか色々むしゃくしゃして。受験のストレスとか、父さんも亡くなったから、色々不安になって……」



 須藤さんが言うには、須藤兄はしばらくの間、父方の親戚の家でお世話になるそうだ。



「ねぇ、海さん。本当にこれでよかったのかな」



 家族が離ればなれになって暮らすこと。それは言ってしまえばなんてことのないことかもしれないけど、予想以上にダメージを与えるものかもしれない。

 家族なのに、別のところにいる。一緒のはずなのに、物理的にも精神的にも、遠くにいる。

 それは果たして、ハッピーエンドといえるのかどうか。



 海さんはそっぽを向きながら言った。



「知らないよ、そんなの。家族が一緒に暮らさなくちゃいけないとか、必ず決まってる訳じゃない。それに遥を見てると、前よりずっと明るくなったと思う。だから個人的にはこれでよかったんじゃないかって思うよ」



 海さんの言葉を聞いて、僕は思わず須藤さんを見た。彼女は篠田と一緒の席に座りながら、楽しそうに何か話していた。

 彼女の笑顔を見て、僕も確信する。



 うん、たしかにそうかもしれない。



 今は修学旅行の最中。電車や新幹線を乗り継いで、僕らは京都駅までやってきた。そこからバスに乗って、今から清水寺に行くんだ。



「楽しみだね」



 前の席にいた篠田が軽く振り向いてきた。僕は「うん」とうなずく。

 篠田は僕の隣の席の、海さんを見た。



「遠藤さんは、京都初めて?」



「うん、まあ」



「そういえばこの前、方向音痴って言ってたよね。大丈夫なの?」



「へえ、そうなんだぁ」



 篠田の言葉に反応したのは、僕らの席の後ろで1人の席を満喫していた徹くんである。彼はにやにやと笑いながら、席を立って僕らの椅子に前のめりになって寄りかかった。

 海さんが慌てて言い返す。



「だ、大丈夫だよ!」



「でも京都と奈良ってかつての日本の中心地でしょ? 道とか入り組んでて絶対に迷子にならないって保証はないよね?」



「うっ……」



 海さんが珍しく動揺しているのを、僕と篠田と須藤さんは笑いながら見ていた。

 徹くんはこうやって人をからかうのが本当に好きなのだ。



「着きましたよ」



 舟久保先生の声に、僕らは一斉に窓に張りついた。坂が上の方まで続いている。テレビや雑誌などで見た、あの清水寺だ!



 バスはまもなく、駐車場に停まった。



「今14時だから、2時間後にこの駐車場に集合してね」



「はーい」



 僕らは先を争うようにしてバスを出る。

 すると目の前に広がっていたのは、どこまでも続く急な坂道だった。京都随一の観光名所である清水寺に続く、清水坂。

 そこでは、日本人だけでなく、様々な外国人が歩いていた。



「すっごーい!」



「で、最初どこ行く?」



 僕はウキウキしながらみんなに聞いた。篠田も目をキラキラさせていて、須藤さんもあんなことがあったけど、今は本当に楽しそうにしている。

 一方で徹くんは、いつも通りのマイペースぶりを発揮していた。



「うーん、まずは八つ橋じゃね?」



「そうだね」



 徹くんがすたすた歩いていくなかで、海さんも冷静な口調で返しつつ彼のあとを追って歩き始めた。

 あの2人はそろってマイペースだなぁ。



「2人とも、待ってよー」



 篠田が慌てて前を行く徹くんたちを追いかけていった。

 僕は須藤さんと一緒に、ゆっくり歩くことにする。

 何を話すべきかとちょっと悩んで、けど彼女とする話題といったらまずは怪我の具合を聞くことが1番だなと感じた。



「怪我はもう大丈夫なの?」

 


「うん……」



「よかった」



「うん」



 須藤さんは僕の言葉にうなずくだけだったけど、嬉しそうな、ほっとしているような顔をしていた。

 それにしても、いい天気だ。もう梅雨の時期だから雨が降るんじゃないかって心配してたけど、天気予報は今のところ。3日間とも晴れ続きの予報をしている。



「2人とも早くー」



 篠田が僕らに向かって手を振っている。前を行く3人はすでに八つ橋の店にいた。



「はーい」



 僕は元気よく篠田に返事をしつつ、須藤さんに向かって手を差しだした。



「行こ」



「うん」



 須藤さんはどこかためらいがちに僕の手をとってきた。

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