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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
5月
11/126

10話 永井コノハ2

 あと、引っかかることがある。

 昨日のテレビのニュースを見る限りでは、大杉学園で事件が起きたみたいなことは報道されなかった。

 大して大きな町でもないから、見落とされているのかもしれないと思って今度は今日の朝刊を調べてみたけれど、地方紙のところにさえ何も載っていなかった。


 そこをふまえた上で考えると、まるで学校全体が全てを知っているかのようにも思えてくる。そもそも僕も遠藤くんも、被害届のような物はだしていない。それなのに学校側は小野塚先生を辞めさせた。まるで小野塚先生が僕らを襲ったことをすでに知っていたようではないか。学校側はあえて知っていた上で小野塚先生を解雇して、さらに昨日あった事件を隠ぺいした?


 僕のとりこし苦労だったらいいのだけれど。


「雪?」


「ん?」


 名前を呼ばれて顔をあげる。篠田がじいっと僕の顔を覗き込んでいた。彼女は「顔、怖いよ?」と息のかかりそうな近距離でそう言ってくる。


 僕は慌てて彼女から距離をとった。


 いちいち顔が近すぎる。


「ちょっとね、寝不足かも」


 適当な言い訳をして、苦笑いを顔に浮かべてみる。篠田が驚いたような顔をした。


「ええっ、大丈夫なの!?」


「大丈夫だよ。昨日ゲームしてたんだけど、ちょっとやりすぎちゃって」


「雪でもゲームなんてするんだ」


「まあね」


 ウソだけど。


 ゲーム機なんて僕の家には存在しない。僕の家にあるのは、適当な家具や電気製品だけだ。


 そのとき、ガラリと教室のドアが開かれた。そちらを見るとドアの向こうから遠藤くんが姿を現した。昨日の傷が癒えていないのか、顔に湿布をしている。

 僕は慌てて席を立ち、彼に挨拶をする。


「おはよう、遠藤くん!」


「ん」


 うなずくだけで彼は僕の横を通り過ぎると、そのまま自分の席へと向かっていって、席へと着いた。


 どうして。


 口を開こうと思って僕は思わず閉じてしまう。聞いていいのか、悪いのかなんてわからない。だけど、疑問に思ってしまう。

 どうして彼はあのとき、僕が襲われることを知っていたんだろう。

 僕と一緒に遠藤くんを見ていた篠田は、彼を見てあっけにとられていた。


「何、あの顔の傷……。ヤンキーと喧嘩でもしたのかな?」


 僕は苦笑しつつ、あえて何も答えないでおいた。

 昨日の今日なら、あの顔は仕方ないかと思う。先生とやりあって、顔じゅう傷だらけにしながらも生きて帰ってきた――なんて言ったら大袈裟だろうか。

 僕の傷は幸いにも腕だったから、制服を着ていればなんとかごまかしきれるレベルだ。これがもし、篠田に見つかったら、「雪まで怪我してるし!」と叫ばれた挙句、「まさか遠藤くんと何かあったの?」と聞かれかねない。


 適当に言い訳を続けてしまったら、またボロをだしてしまいそうだ。


 やがて朝のホームルームの時間となる。徹くんが例によって時間ぎりぎりに登校して、そのあとからやってきた副担任の秋庭あきば先生に「もうちょっと早く来いよ」と叱られていた。

 朝のホームルームの前に秋庭先生は、小野塚先生がこの学校を辞めたことを告白した。また教室内がざわつく。


「まあ、小野塚先生がいなくなったのは悲しいが、その悲しさをバネにして、今日も1日頑張ろう」


 秋庭先生はやる気の失せるような声音でそう言った。

 前から思ってたけど、この先生は本当にやる気がなさそうにしか聞こえない。

 そんな日常っぽいことを思いながら、僕はカバンの中から1時間目の授業科目の教科書とノートを取り出した。

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